神戸製鋼所が神戸市で進める石炭火力発電所の増設工事で、工事前の環境影響評価(環境アセス)に対する国の審査は違法として、近隣住民ら12人がアセスの結果を適正とした国の通知の取り消しなどを求めた訴訟の判決が15日、大阪地裁であった。森鍵一(もりかぎはじめ)裁判長は原告側の請求を退けた。原告側は控訴する方針。
原告側弁護団によると、石炭火力発電所の設置や増設を認めた行政判断を問う初の司法判断だった。
判決によると、神戸製鋼所は2022年度までに2基(計130万キロワット)の増設を計画。18年5月、環境アセス法に基づき、大気汚染などの予測や対策を示した「環境影響評価書」を経済産業相に提出した。経産相は審査の結果、環境への適正な配慮がなされていると通知し、工事が着工した。
判決は、通知によって工事に着工できる法令の仕組みに着目し、通知が取り消し訴訟の対象となる行政処分にあたるとした。住民らが大気汚染で健康被害を受けるおそれがあるとして原告適格も認めた。
そのうえで、評価書の審査の違法性を検討。評価書の作成にあたり神戸製鋼所側がPM2・5(微小粒子状物質)排出の影響を考慮しなかった点を、発生源などに科学的に解明すべき課題が残され、不合理といえないとした。燃料として石炭に代わる天然ガスなどを検討しなかった点については、アセス法に「燃料」について複数案の検討を義務づける規定はないと指摘。アセスを適正とした経産相に裁量権の逸脱乱用はないと結論づけた。
判決後の会見で、原告団長の広岡豊さん(73)は「不当な判決だ。気候変動や大気汚染は死活問題。(控訴して)現在と未来の安心のために頑張りたい」と語った。弁護団の池田直樹弁護士は「司法が苦言を呈し増設を止めることを期待した。裁量の壁は厚かった」と話した。経済産業省は「国の主張を裁判所から理解いただけた」などとするコメントを出した。(米田優人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル