災害派遣にあたる自衛隊員のメンタルヘルス対策で、陸上自衛隊が日々の活動後の任務解除ミーティング(解除MT)に取り組んでいる。多くの遺体収容に直面した2011年の東日本大震災を発端に全国の部隊に広まったもので、新型コロナウイルス対応での派遣も相次いだ昨年にはマニュアルがまとめられた。
陸自のマニュアルによると、解除MTは「5~10名程度」の小グループで「一日の任務終了後、日々実施」し、所要は「短時間(20分程度)」。通常の訓練後に改善点を検討する反省会とは違い、災害派遣など精神的負担の伴う任務で「日々のストレスを組織で軽減するため」に行う。
解除MTの手順はこうだ。上司は、隊員たちをねぎらい、その日の頑張りを聞く。危険な現場で活動する隊員が情報不足により不満をためないよう情報を伝える。「困っていること、知りたいこと」を一人ひとりに確かめ、その際には、目の周りや唇など不調が表れやすい部分に気を配って体調を確認する。さらに、活動への意見を聞き、「前向きな言葉で締める」。
また、上司に向けた助言として、「上司・組織への不平不満が蓄積されないように(毎日話す機会があることを認識させる)」「隊員は上司の一挙手一投足を注視している」といった点も強調されている。
自衛隊でのメンタルヘルス対策は2000年代に本格化し、自殺や事故があったり、海外派遣から戻ったりした部隊などで聞き取りが行われていた。そうした活動が、死者の6割にあたる約9500人の遺体を自衛隊で収容した東日本大震災を機に解除MTへと発展。隊員たちは遺族の待ち望む遺体収容が進まない焦りなどを語り合っては、翌日の任務に当たった。
解除MTはその後、災害派遣の中心となる陸自では精神的負担が大きい活動を中心に実施。陸自によると、遺体に接する可能性がある豪雨や地震のほか、家畜の処分が伴う豚コレラや鳥インフルエンザへの対処が対象になっている。
新型コロナ関連の派遣でも昨年、集団感染が起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号や帰国者の一時滞在先で衛生や生活を支援した部隊で行われた。解除MTの手法が各地の部隊でばらついてきたためマニュアルをまとめ、基本形を示したという。
陸自のメンタル担当幹部を務め…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル