炉端焼きの発祥の店とされ、炉を囲んで多くの文化人、知識人が酒と会話を楽しんだ仙台・国分町の「郷土酒亭 炉ばた」が、6月末で閉店する。多才な趣味人として知られた故・天江富弥が70年前に開いた店。代替わりしながらもその灯を守ってきたが、新型コロナによる客激減に耐えられなかった。惜しむ声があがっている。
天江は日本で初の童謡専門誌を創刊し、郷土史やこけし研究、竹久夢二の収集でも知られた。戦後間もない1950年に「炉ばた」を開業。交遊の広い天江を慕って、美術家岡本太郎、版画家棟方志功、俳優仲代達矢、作家遠藤周作、永六輔各氏らが通い、まちの人と交じりあって文化談義に花を咲かせた。
部屋中央に炉を切り、客が囲むスタイルが、各地の炉端焼き店の起源となったとされる。「おんちゃん」と呼ばれた天江が炉のそばに陣取り、長い木べらにとっくりを載せて差し出すのが名物だった。酒は、天江の実家の蔵元がつくる「天賞」。「どごからござりした?」。見送るときは「お明日(みょうにぢ)おしずかに」。柔らかな仙台弁と郷土料理でもてなした。
天江は84年に亡くなった。そ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル