公立小中学校の給食を無償化する自治体が相次いでいます。物価が上昇する中で、歓迎の声が強いようです。しかし、学校給食に詳しい京都大学人文科学研究所の藤原辰史准教授(食の現代史)は、「無償化は進めるべきだ」としながらも、今の風潮には危機感があるといいます。どういうことでしょうか。
――無償化に取り組む自治体が増えています。一方で、国の制度としては、生活保護を受けている世帯などに無償の対象は限られます。
生活保護を受給する家庭の子どもだけ無償化するというのは、1950年代の日本の伝統的な家族観によっています。親が子どもの面倒をみるべきだ、親がどうしても面倒をみきれなかったらフォローしますよ、という価値観ですよね。
でも、もうちょっと社会全体として「私たちの子ども」という子ども観や当事者意識をもってフォローしていくという考え方でも良いのではないでしょうか。子どもである以上、制限なく、親が誰であろうが「私たちの宝」です。
無償化に反対する理由として「給食費を支払うことで当事者意識が芽ばえる」「無償化されるとみんなが無関心になって質が下がるのではないか」という意見も聞きます。
確かに一理ありますが、税金そのものだって私たちが払っているのですから、給食費を支払うのと同じことですよね。だからその税金を使って、子どもたちにおいしい給食を食べさせてほしいと私は考えます。
学校給食法を、子どもの貧困が深刻化した今の時代に沿った形にしていくべきです。
――今の時代に沿った形とは?
例えば、朝や夏休みの給食の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル