新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で、症状のない患者の部屋からもウイルスの遺伝子が検出されたことがわかった。国立感染症研究所(感染研)が船内のさまざまな場所を調査した結果を公表した。
乗員乗客が使った計49部屋のドアノブや、共有部分となる踊り場の手すりなど計601カ所で、新型コロナの遺伝子が検出されるかを調べた。退室から検体を採取するまでの時間は最長で17日だった。
遺伝子が検出されたのは58カ所で、ほとんどが感染者の室内からだった。症状のある人の部屋では15%にあたる28カ所から、症状のない人の部屋では21%の28カ所から検出され、症状の有無で検出の割合に統計学的に意味のある差は認められなかった。
検出場所は、浴室内トイレの床13カ所(39%)、枕11カ所(34%)、電話機8カ所(24%)、テレビリモコン7カ所(21%)などだった。
新型コロナは、症状のない人からも感染が広がるとされる。感染研は調査から、症状の有無に関わらず「日常的な手指衛生がきわめて重要と再確認された」と指摘。唾液(だえき)のしぶきなどによる飛沫(ひまつ)感染だけでなく、日用品の表面を介した接触感染も考えられるため、日ごろから身の回りの清掃や消毒をすべきだとしている。
共有部分では、廊下天井の排気口1カ所から遺伝子が検出された。感染研の山岸拓也・薬剤耐性研究センター第4室長は、船内の廊下は換気の悪い状況だったと説明。空気の流れが乏しい環境では、ウイルスが1メートル以上浮遊する可能性もある、としている。
ダイヤモンド・プリンセス号では、乗員乗客3711人のうち712人がPCR検査で陽性と判定された。感染者のうち46%の331人に症状はなかった。(野口憲太)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル