中村尚徳
無言の携帯電話から聞こえる河川のせせらぎを聞き逃さなかった――。宇都宮市中央消防署の消防・救急隊が1月、音を頼りに助けを求めるお年寄り男性の居所を突き止めて命を救った。市消防局は4日、隊員の男女8人を表彰した。
1月4日午前5時すぎ、携帯電話からの119番通報があった。しかし、無言で、呼び返しても応答がなかった。携帯電話の契約情報から自宅を割り出し、消防・救急隊が出動した。
自宅に電気やテレビはついていたが、人の姿は見えなかった。電話すると携帯電話はつながったが、またも無言だった。ただ、かすかに川のせせらぎのような音が聞こえた。
GPS(全地球測位システム)の位置情報で半径400メートル以内の場所にいることが判明。隊員らは近くに水の流れる音がする場所がないか、カーナビゲーションで探した。東方に河川を見つけて捜索を始めた。
再び携帯を鳴らした。着信音が聞こえたため、音をたどっていくと、水深約20センチの河川に横たわっている男性を見つけた。男性は約3メートル下の河川に誤って転落した可能性があった。
気温零下3度。男性は呼吸も脈拍もあったが、体温が30・5度まで下がる低体温状態だった。頭にもケガをしていた。隊員らが病院に運んだ。今も入院しているが、回復に向かっているという。
同署の野口和樹副署長は「偶然が重なった特異な事例。機転を利かせた連係プレーが功を奏し、一命をとりとめることができた」と話した。(中村尚徳)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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