停滞する梅雨前線の影響で、九州地方では4日、各地で豪雨となり、河川の氾濫(はんらん)や洪水、土砂崩れが相次いだ。熊本県の発表によると、午後5時段階で15人が心肺停止、1人が重体となり、11人の行方や安否がわかっていないという。一方、同日午後11時までに芦北(あしきた)町で1人、津奈木(つなぎ)町で1人の計2人の死亡を、それぞれ町が確認した。
県の発表のうち、球磨(くま)村では特別養護老人ホーム「千寿園」が水没し、14人が心肺停止、3人が低体温症となっている。津奈木町で1人が心肺停止。芦北町で1人が重体。また、行方や安否が分からなくなっているのは芦北町の6人と津奈木町の2人、人吉市の3人という
熊本県では午後5時現在、避難指示が八代、水俣、人吉など11市町村の9万2703世帯20万4567人に、避難勧告が芦北町とあさぎり町の1万3149世帯3万2201人を対象に出された。八代市では坂本庁舎1階が水没した。同市や人吉市などでは洪水や土砂崩れのため、多数の住民が孤立している。
国土交通省によると、熊本県南部の球磨川で決壊1カ所、氾濫11カ所が確認された。
自衛隊は、熊本県からの災害派遣要請を受け、孤立した住民の救援にあたった。近県の消防や警察も応援に入った。
鹿児島県では、阿久根市2011世帯4216人に避難指示が、伊佐市全域と鹿児島市などの一部に避難勧告が出された。
4日午後4時までの24時間の降水量は、熊本県の湯前町450・5ミリ、水俣市450・0ミリ、山江村425・0ミリ、あさぎり町419・0ミリ、球磨村416・5ミリだった。また、4日朝までの3時間降水量は、天草市205・5ミリ、芦北町190・5ミリ、山江村186・0ミリと、いずれも観測史上最多だった。発達した雨雲が次々発生する「線状降水帯」ができたとみられる。
気象庁は午前4時50分、熊本、鹿児島両県の一部に「大雨特別警報」を発表。11時50分に大雨警報に切り替えたが、今後も雨は多いところで5日午後6時までの24時間に九州南部200ミリ、東海地方150ミリと予想され、引き続き洪水や土砂災害への警戒を呼びかけている。
JR九州は日豊線や肥薩線の一部区間で終日運転を見合わせたほか、九州新幹線などが一時運転を見合わせた。高速道路や一般道でも通行止めが相次いだ。
熊本、鹿児島、宮崎の各県では大雨による停電も相次いだ。九州電力によると、球磨村では一時、全戸の97・3%にあたる約2450戸で停電したという。
停電やケーブルなど通信設備の水没によって、携帯電話や固定電話、インターネットの障害が起きた。人吉市庁舎では一時、停電で電話やネットが使えなくなった。
政府は、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中でマスクや消毒液などの支援物資を、被災自治体の要請を待たずに送る「プッシュ型支援」を実施する。内閣府によると、4日午後の時点で一部の物資については各省庁などへの手配を進めているという。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル