村野英一
静岡県熱海市長選は11日投開票され、現職の斉藤栄氏(59)が、新顔で前市議の泉明寺みずほ氏(51)を破り、5選を果たした。昨夏の土石流災害で市の責任が問われる中、観光の集客力で評価される現職が無所属同士の一騎打ちを制した。当日有権者数は3万1220人。投票率は44・33%(前回は無投票。前々回は59・41%)だった。
当選を決めた斉藤氏は報道陣の取材に、「土石流災害からの復興が喫緊の課題だ。観光産業には投資を続け、施設のレベルなどを上げていきたい」と述べた。観光のインフラ整備や情報発信を引き続き推し進め、温泉観光地を活性化する方針だ。
土石流では、災害関連死を含む死者・行方不明者が28人出た。被害を甚大化させた盛り土について、業者への市の不適切な対応が問われている。泉明寺氏は、防災対策を含む措置命令を業者に出さなかった現職を「責任をあやふやにしている」と批判。市幹部や土木専門家らの新組織で土石流の原因を究明すると訴えたが、及ばなかった。
観光業界でコロナ禍の影響が深刻な中、「変革よりも安定を望む」(旅館経営者)と斉藤氏への支持が広がった。市の宿泊客数が2011年の約236万人から15~19年は300万人超に増えたことについて、斉藤氏は「梅園などの花を見るインフラの整備」で集客力が増し、V字回復につながったと説明した。
斉藤市政はメディアへの情報発信にも特徴がある。12年から続ける専任職員によるロケ支援で首都圏へ街の映像を発信。ここ数年のテレビのロケで最も多いのはスイーツの店という。「旅の情報番組の約9割がスイーツを取り上げ、若いお客さんを増やしている」と担当職員は話しており、市は今後もロケ支援に注力する方針だ。(村野英一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル