加藤真太郎
決め手は、とっさに持ち出した500ミリリットル入りのペットボトル2本の水だった。
4月21日午後6時前、「セキ薬局白岡店」(埼玉県白岡市千駄野)の店内に、女性が駆け込んできた。「水を早く!」。同店に勤める薬剤師の小柴友哉さん(33)と小川奈菜子さん(30)が店のガラス窓ごしに外を見ると、向かい側の路上で炎が高く上がり、人が燃えていた。
2人はすぐさま、店にあった500ミリリットル入りのペットボトル水2本を手に急いだ。服が燃えて苦しんでいる男性の背中などに水をかけ、小川さんが119番通報した。「肩のあたりにかけたら、火がおさまった」と小柴さんは振り返る。
2人はこの後も、店から500ミリリットル入り4本、1リットル入り1本の水を持ち出し、焼けただれて苦しがる男性の体にかけ続け、9分後に現場に到着した救急隊員に引き継いだ。埼玉東部消防組合白岡消防署によると、男性は一命をとりとめたという。
2人には12日、同署から感謝状が贈られた。
2人とも人命救助の経験は初めてという。小柴さんは13日、朝日新聞の取材に「瞬時のことだったが、固まってしまうこともなく、最低限、頭が回った。わずか数秒で燃え広がっていたので、すばやく行動できてよかった」と話した。
金子芳之署長は「2人の勇気ある行動に敬意を表する」とたたえた。(加藤真太郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル