36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の判決が25日、京都地裁で言い渡される。
捜査段階の青葉被告や関係者の供述調書、22回に及ぶ公判でのやりとりや取材などで、被告の生い立ちや職を転々とした派遣労働時代、小説家を目指して挫折した経緯などが次々に明らかになった。
「自分の人生はあまりに暗い。京アニは光の階段を上っている……」
青葉被告が事件直前、現場脇の路地に座り込み、頭を抱えながら考えたことだった。
青葉被告の最初の「転機」は小学3年の時。両親が離婚し、トラック運転手の父親と兄、妹との4人で暮らし始めた。まもなく父親は無職になり、生活は困窮。さらに青葉被告と兄は、幼いころから父親に殴られたり、冬に裸で立たされて水を掛けられたりする虐待を受けて育ったという。
中学になっても虐待は続いた。中1の時、ある柔道の大会で準優勝したが、父親から記念の盾と柔道着を燃やすように言われ、従った。
中2で転校するが、なじめずに不登校に。フリースクールを経て定時制高校に進学した。
高校時代は「一番良い時代だった」という。埼玉県庁の嘱託職員として郵便物の仕分け作業や配達などを担った。
卒業後、「ゲーム音楽を作る仕事」に憧れ、東京都内の専門学校に進んだ。しかし1年後に帰郷。コンビニでバイトをしながら、一人暮らしを始めた。
まもなく父親が死去。お悔やみに来た母親とは十数年ぶりの再会だったが、言葉を交わすことはなかった。
7年ほど続けたコンビニバイトを「人間関係」を理由に辞めた後は、生活保護も断られ、行き詰まった。窃盗で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けた。
その後、派遣社員として複数の工場を転々とする時期に、大きな事件が起きた。08年6月の東京・秋葉原の無差別殺傷事件だ。「自分もこんな感じになってしまうのでは」と思ったという。
同じころ、京アニのアニメ作品「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」を見て衝撃を受け、小説を書き始めた。
しかし12年6月、コンビニ強盗を起こし、実刑判決。服役中もノートに小説のアイデアを書きため、出所後、再び小説を書き始めた。
16年、長編小説が完成。7年半で20回ほど書き直した「金字塔」を、好意を寄せていた京アニの女性監督の誕生日に「京アニ大賞」に応募した。
しかし落選し、裏切られた気分に。さらに、自分が小説に盛り込んだアイデアを京アニに「パクられた」という妄想にとらわれる。さらにその落選と盗用は「闇の人物のナンバー2」のしわざだという考えにも縛られていく。
このころ、精神科に通院。生活保護を受給しながら、心身の状態を観察する訪問看護や身の回りの世話をする訪問介護も受けていた。しかし看護師やアパートの近隣住民とのトラブルは絶えなかった。
検察側は死刑を求刑。弁護側は犯行に妄想が大きく影響していたとし、心神喪失で無罪か、心神耗弱で減刑すべきだと訴えている。判決が被告の成育歴や妄想をどのように評価するのか、注目が集まる。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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