父のかばんに残された兄の記録 75年前の戦死を刻む

 沖縄県糸満市にある「平和の礎(いしじ)」に、奈良県出身で沖縄で戦死した三谷行雄さん(享年21)の名が今年、新たに刻まれた。「礎がある限り、兄が生きた証しは残る」。刻銘を申請した弟の忠弘さん(72)=同県大和高田市=はそう語る。

 礎には、沖縄戦などで亡くなった国内外24万人以上の名前が刻銘されている。行雄さんは陸軍独立歩兵第15大隊の軍曹だった。沖縄県遺族連合会の資料などによると、1945年4月から現在の浦添市などで激しい戦闘を繰り広げた。戦況の悪化に伴い本島南部へと追い詰められ、組織的戦闘が終了する10日前の6月13日、米軍の兵士に撃たれて亡くなったという。

 戦後生まれの忠弘さんは兄をよく知らない。約20年前に亡くなった父も兄のことを詳しく話さなかった。ただ、毎日、仏壇に読経し、孫の後頭部をなでて、「行雄とそっくりやなぁー」とつぶやくこともあった。「戦後もずっと兄のことを気に掛けていたんでしょう」と忠弘さん。

 父の遺品からは、兄の戦中の行…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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