愛知県岩倉市の五条川には多くの橋がかかっている。名古屋市の伊藤正子さん(78)は、60年以上前に父が設計に携わった朱色の橋が目に焼き付いている。
小学6年のとき、桜並木を観賞する橋の設計を役所勤めだった父が任された。設計図に記された字は、活字のように端正だった。自宅の6畳間は、家族でおしゃべりしたり、お菓子を食べたりする憩いの場だった。そこで設計図を机に広げ、はしゃぐ子どもたちに嫌な顔をせず、いつまでも熟考していたのを覚えている。
橋は1年ほどで完成した。しかし、父がその橋から桜を見ることはなかった。
桜の季節を待っていた195…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル