おやじのせなか:フォトジャーナリスト・安田菜津紀さん
著名人が父のことを語る連載「おやじのせなか」。今回はデジタル版限定のロングバージョンです。
父は東京・新橋でうなぎ料理屋を構えていました。うなぎを焼く煙とタレの匂い、そしてその向こう側にうっすらと見える父。それがたぶん一番最初の記憶です。
口数が少なく穏やかな人でしたね。夜遅くまで働いた翌日の朝。小さかった私が「お父さん起きて!」と言って体に乗っかっても、振り払ったり怒ったりすることはありませんでした。
幼稚園の頃にはっきり覚えている場面があります。母は月に300冊の絵本を読み聞かせてくれる人でしたが、その日は父が珍しく早く帰り、代わりに読んでくれました。私をひざの上に乗せてページをめくるのですが、すらすら読めず、つっかえます。私は「もういい!」と言って立ち上がり、こう言いました。
「お父さん、日本人じゃないみ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル