父は子の結婚後に被爆者手帳を取得した 2世が語った「不安」

 長崎原爆被爆者の子である「被爆2世」ら26人(うち1人死亡)が、国が2世への援護策を取らなかったのは憲法違反だと訴えて、1人あたり10万円の国家賠償を求めた訴訟の判決が12日、長崎地裁であった。天川博義裁判長は放射線の遺伝的影響について「いまだ知見が確立していない」とした上で、請求を棄却した。2世への遺伝的影響を巡る初の司法判断。

知られざる被爆2世の不安とは。記事の後半では、6年近い訴訟を闘った原告たちが記者に伝えたことを紹介します。

 国は、被爆者援護法に基づく被爆者に医療費負担や手当を支給するなど援護策を講じている。だが被爆2世は対象外で、国が2世に行っているのは年1回の健康診断だけだ。

 原告側は、動物実験などで発がんリスクの増加を含む影響が証明されており、人も例外であるとは考えられず、2世が遺伝的影響を受けることは否定できないと訴えた。また、被爆者援護法は「身体に原子爆弾放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」も援護対象としており、2世はこれに当たると主張。対策を怠ってきた国に「立法の不作為」があり、平等権などを保障する憲法に違反するとして、1人あたり10万円の慰謝料を求めた。

 国側は、放射線の人体への影響を調べている「放射線影響研究所」などの70年以上にわたる研究で、次世代への遺伝的影響は確認されていないとして、原告の主張は遺伝的影響を高度の蓋然(がいぜん)性をもって立証できておらず「具体的な根拠に欠ける」と指摘。原爆投下当時に生まれていなかった2世と実在していた被爆者とで異なる扱いをすることは「何ら合理的理由のない不当な差別的取り扱いであるとはいえない」としていた。

 判決は遺伝的影響について、「可能性を否定できないというにとどまる」とした。また、被爆者援護法が対象とするのは、胎内被爆者を除けば、「当時すでに出生していた者」で、「直接被爆した原爆の放射能により健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者」との判断を示した。

 そのうえで、原爆放射線の影響が未解明ななかで援護の対象の範囲を定めることは「高度に専門的技術的な知見を基礎としつつ、総合的政策判断を要する」として、立法府の合理的な裁量的判断に委ねられていると判じた。

 判決を受けて厚生労働省は「今回の判決では、国の主張が認められたと認識している」とコメントした。(寺島笑花、榎本瑞希、神宮司実玲)

記者が感じた「後世への被害」

 「(被爆)2世の知られていない苦しみを知って欲しい」。取材を重ねる度に、そんな言葉を聞いてきた。原告の三笘良夫さん(59)=福岡県=は判決後、「2世としての不安を推し量ってほしかった」と語った。

 被爆者だった父は前立腺がん

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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