文・中沢滋人、写真・日吉健吾
北海道豊頃町の観光名所。堤防の階段を下りた先、河川敷の広大な牧草地の真ん中に、その木は立っていた。
草原の真ん中で、枝をいっぱいに広げた1本の木。背後から昇った太陽のオレンジ色が、どんどん光を増してくる。シルエット状の枝の間から差す金色の光で、周辺の草に付いた朝露がキラキラと輝いた。
10月のある日。日の出時刻。「この光景を見て一日が始まったら、きっといい日になると思うでしょ」。北海道帯広市の写真愛好家・浦島久さん(68)の言葉にうなずく。
豊頃町の十勝川河川敷にある「ハルニレの木」は推定樹齢約150年。実は2本の木が一体になっている。草原の真ん中で力強く立つ姿は、多くの人々を魅了してきた。浦島さんもその一人。10年以上、週3回は通って四季の姿を撮り続けている。
半世紀前の堤防改修工事で、他の木と一緒に伐採されるところだった。だが、放牧牛が木陰で休めるようにと、枝ぶりの良いこの木が残されたと伝わる。1979年に東京の写真家・姉崎一馬さんが出した写真絵本をきっかけに、全国に知られるようになった。さらに浦島さんの父で、地元で時計電器店を営んでいた甲一さんが四季折々の姿を写した写真集を94年に出し、知名度をさらに高めた。町を代表する名所に育った。
甲一さんは2001年に77歳で亡くなった。浦島さんは若い頃、そんな父に「写真なんか撮ってないで、もっと働けばいいのに」と反発していた。だが、十数年前にふとしたきっかけで木を撮り始めたところ、魅了された。
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町にはもう一つ、新しい名所…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル