吉原の遊郭を舞台にした「髪結百花(かみゆいひゃっか)」や、現代の助産院を描いた「おっぱい先生」。
働く女性を主人公に幅広く執筆している泉ゆたかさん(41)は、34歳の時に小説家になった。
大学在学中の20歳ごろから年2~3本のペースで賞に投稿。
2016年に「お師匠さま、整いました!」で第11回小説現代長編新人賞を受賞してデビューした。
現在も週3回は塾講師として働きながら、執筆を続けている。
そんな泉さんの作業部屋は、家族から「猫の部屋」と呼ばれている。
原稿を書いている間、レーザープリンターの上で丸まっているのは隻眼のキジトラ「まねちゃん」。
小説家としてデビューする前に迎え入れた元保護猫だ。
今から11年前、同じ塾で働いていた同僚との結婚が決まり、ペット可の新居へと引っ越し。
猫を迎え入れようとNPO法人のサイトを眺めていて、一目ぼれした。
生まれて半年ほどの片目の猫を救いたい、という使命感からではない。
昔実家で飼っていた猫と真ん丸な目がそっくりで、純粋に可愛いと思った。
当時の名前は「あいちゃん」。交通事故に遭ったのか、片方の眼球が飛び出した状態で保護されたそうだ。
そのままあいちゃんという名前で呼ぼうと思っていたら、NPOの代表からこう言われた。
「迎え入れる時の大事なプロセスの一つなので、ぜひ新しい名前をつけてください」
大好きな俳優のジョニー・デップから「ジョニー」をもらおうか。
ロックバンド・筋肉少女帯の曲にちなんで「ドルバッキー」はどうだろう。
いくつも考えたが、婚約者からことごとく却下され、彼が出してきたまねちゃんに決まった。
「招き猫の『まねちゃん』はどう?」という提案に、それはいいなと思ったからだ。
まねちゃんを迎え入れてまもなく、2人の運命は大きく動き出す。
半年後に結婚を控えるなか突…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment