特殊詐欺の「主犯」、暴力団が4割 組織トップへの民事提訴も相次ぐ

 差し押さえを免れる目的で資産を隠したとして、国内2位の勢力を持つ指定暴力団トップ=今年5月に死亡=が書類送検された。特殊詐欺事件に関わった傘下の組員の代表者として、賠償責任を問われた裁判の最中だった。オレオレ詐欺や還付金詐欺といった特殊詐欺事件への暴力団の関与は根深く、「主犯」として摘発された人物のうち暴力団関係者が4割にのぼっている。

 警察庁のまとめでは、特殊詐欺に関与した疑いで2017~21年の5年間に摘発された暴力団構成員や準構成員らは、全国で2491人。全体の19・0%を占めていた(21年は暫定値)。特殊詐欺に限らないすべての事件を対象にした場合の5・8%に比べると3倍以上高く、暴力団が資金獲得の手段として深く関わっていることがうかがえる。

 それを裏付けるように、詐欺を主導していた人物には暴力団関係者が目立つ。同期間に特殊詐欺事件の「主犯」として摘発された281人のうち、44・5%に当たる125人が暴力団構成員や準構成員らだった。

 暴力団員による特殊詐欺事件をめぐっては、その組員が所属する組織トップの「代表者責任」を問い、被害者側が民事提訴する例が近年相次いでいる。トップが持つ豊富な資金から、被害回復を図る狙いもある。

 こうして組員らによる特殊詐欺の代表者責任を問われた訴訟の最中に、指定暴力団住吉会の関功前代表が生前、所有する不動産を親族に無償譲渡していたことが発覚。差し押さえを免れる目的だったとして、警視庁が9月に書類送検していたことが明らかになった。

70代女性、「勇気を出して組長提訴」

 関前代表の責任を追及する裁判を起こしたのは、70代の女性だった。

 「暴力団の組長を相手に訴訟を起こすことにちゅうちょもあったが、最後は勇気を出して訴訟を起こすことにした。私からだまし取ったお金を返して欲しい」。裁判で提出した陳述書の中で、女性はそう訴えた。

 裁判資料によると、女性は14年7月、自宅で次男を名乗る男からの電話を受けた。男は「俺」としか名乗らず、次男と声が少し似ていたため本人かどうか確かめようと名前を呼びかけたところ、「うん」と返事があったため、次男本人と思い込んだ。

オレオレ詐欺で多額の現金をだまし取られた女性。何十年もためていた虎の子のお金は、まさに詐欺グループがかたった「次男」のためのものでした。女性は精神的な損害も含め、組トップを相手取った訴訟に踏み切りました。

 翌日、同じ男から何度も電話…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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