犯罪被害者や遺族らの生活を被害直後から積極的に支援しようと、大阪市が「能動型」の新しいタイプの条例制定を目指している。犯罪被害者の支援条例は全国の自治体で制定されつつあるが、被害者からの申告を待つのではなく、被害直後から行政が積極的に介入するのが特徴。他都市に比べ遅れ気味だった支援態勢をより充実させる形で導入する。来年2月の市議会に条例案を提案する。
市によると、新条例は被害直後の混乱期にある被害者らを早い段階から支援につなげるのが狙い。他の自治体が制定している条例では、被害者が支援を受けるには申告が必要だが、大阪市は警察を通じて被害者側の了承を得た上で被害者に直接連絡する方式を想定している。
生活支援に重点を置き、見舞金の支給のほか、ホームヘルパーによる家事のサポートなどを盛り込む方向で調整中。今月末にも意見を募るパブリックコメントを開始する予定だ。
大阪市の平成29年の刑法犯認知件数は約4万8000件で、名古屋市(約2万6000件)や横浜市(約2万件)など他の政令市と比べ突出して多い。警察庁によると、16年に犯罪被害者等基本法が制定されて以降、今年4月1日時点で17道府県、6政令市、272市区町村が支援条例を制定しており、犯罪被害者でつくる団体が昨年11月、大阪市に「犯罪の多い大阪市に条例がなく、他との地域格差が生じている」とする要望書を提出していた。
市は今年3月、条例制定に向け識者らによる懇話会を創設、検討を重ねてきた。委員から「被害直後は今後の見通しを立てられる状況にない」との指摘があり、早期からの支援を求める声が上がったという。
被害者支援に詳しい常磐(ときわ)大の長井進名誉教授は「支援制度の活用を行政から働きかけることは被害者側の負担を軽くする意味がある」と大阪市の素案を評価。ただ、「直接被害者側に連絡する場合、不用意に傷つける二次被害が起きる可能性もある」と、被害者感情を十分に理解した職員のきめ細かな対応が必要との見方を示している。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース