TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。1月10日(金)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、スローニュース代表取締役の瀬尾傑さんが“実名報道”について見解を述べました。
◆犯罪被害者の実名報道は必要なのか
8日、神奈川県相模原市の障がい者施設で45人が殺傷された事件の初公判が行われ、娘を殺害された母親が娘の名前を公表しました。今回の裁判では、被害者の名前など個人が特定される情報は伏せられていましたが、母親はそれに違和感を覚え、名前の公表を決断したということです。
今回の「津久井やまゆり園事件」の報道では、初期段階で被害者団体から名前を公表しないでほしいという申し入れがあり、「警察側は基本、名前を発表しなかった」と瀬尾さん。裁判でも、亡くなった19人の方は甲Aさん、甲Bさんなどと呼称し、負傷者は乙Aさん、丙Bさんなど乙丙とアルファベットを組み合わせて名前を出さない形になっていました。
ここ最近、被害者の名前を公表しないケースは多く、例えば昨年の「京都アニメーション放火殺人事件」もそうだとか。
その理由は2つあり、1つは報道が殺到し、犠牲者の遺族や家族、被害者に迷惑をかけてしまうため。そして、「津久井やまゆり園事件」に関して言えば、「精神障がい者が入居していた事件なので、家族がいわれなき差別を受ける可能性もあるため公表を控えた」と言います。
しかし、全ての遺族、被害者がそう思うわけではなく、今回も遺族の1人が「裁判のなかで“甲さん”“乙さん”と呼ばれることに納得がいかない。自分の娘には名前がある、自慢の娘だったんだ」と、亡くなった娘さんの名前を公表しました。
瀬尾さん自身は、「原則的には被害者の方も名前を公表すべき」と主張します。その理由は、「犯罪被害も実名の方が伝わり、記録としてもちゃんと残る」ため。さらには、「1人1人、生きている方が亡くなったことに思いを馳せることにより、事件を防ぐ思いや事件に関する背景が伝わる」とも。
もう1つは、「(名前を公表するかしないかを)警察がコントロールするのは危険」と指摘。警察は過去に自分たちの不祥事や不手際を隠蔽するために名前を公表しなかったケースがあるそう。
ただ、名前を公表することで「遺族の方に報道被害が発生することはあってはならない」と断言します。それだけに、瀬尾さんは「メディア側も抑制的な取材が求められる」、さらには「世の中に対して、なぜそういう報道が必要なのかを説明しなければならない」と言い、そうすることで「視聴者の方も理解してもらえると思う」と話していました。
MCの堀潤は、瀬尾さんの話に頷きつつ、取材する側は被害者や遺族になぜ名前や写真を出したいのか、「丁寧に説明できるだけの鍛錬を積んでおくべき」と主張。すると瀬尾さんは過去の取材経験から「遺族の方も一人ひとり思いは違う。それに対して丁寧に対応する必要がある」と言い、メディア側も社内でそういう訓練の実施、知識やスキルを共有する仕組みを作る必要性を訴えていました。
manma代表で慶應義塾大学院生の新居日南恵さんは、名前が公表されることによってインターネットで検索されることを想定すると、「名前が出た後の波及効果は想像以上に大きいと感じる、その不安感は未だに感じる」と不安視していました。
番組では、視聴者に「犯罪被害者の実名報道をどう思いますか?」というテーマで生投票を実施。結果は以下の通りです。
◆犯罪被害者の実名報道をどう思いますか?
必要……576票
必要ではない……822票
被害者側の意向を尊重……1251票
Source : 国内 – Yahoo!ニュース