同性パートナーが、犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)に基づいて遺族に支払われる給付を受けられるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は17日、当事者双方の意見を聞く弁論を3月5日に開くと決めた。最高裁の弁論は二審の判断を変えるのに必要な手続きで、「同性パートナーは支給対象外」とした二審判決が見直される可能性がある。
同性パートナーが公的な給付金の支給対象になるかについて、最高裁が判断を示すのは初めて。
犯給法は、被害者の遺族に遺族給付金を支給すると規定。「遺族」には、婚姻届を出していなくても「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を含むと定める。
名古屋市の内山靖英さん(48)は2014年、20年以上交際・同居していたパートナーの男性を殺害された。「パートナーとの関係は異性間の事実婚と同じで、自身も遺族に当たる」として愛知県公安委員会に給付金を申請したが、認められなかったため、18年に不支給とした裁定の取り消しを求めて県を提訴した。
一審・名古屋地裁は、当時、同性パートナーへの社会的な理解は相当程度進んでいたが「同性間の共同生活を婚姻関係と同視できるという社会通念はなかった」と判断。同性パートナーは異性間の事実婚とは違い、「遺族」には当たらないとして請求を棄却した。
二審・名古屋高裁も、犯給法の規定は異性間の関係を前提とし、同性間を含むとは解釈できないとして、一審を支持。性別に基づく取り扱いの差異は、法の下の平等を定めた憲法14条には違反しないとも判断した。高裁判決を不服として、原告側が上告していた。
原告側代理人の堀江哲史弁護士は「一、二審の判断が最高裁で良い方向に覆る可能性があり、前向きに受け止めたい。人権の『最後のとりで』である司法が、性の多様性や、性的少数者の当事者に真摯(しんし)に向き合う流れが生まれ始めている」と話した。(遠藤隆史、高橋俊成)
最高裁の判断、ほかの公的給付に影響する可能性も
「事実上婚姻関係と同じ事情にある者」。訴訟の最大の争点は、法律のこの言葉が示す範囲だ。
日本では、婚姻届を出して法律婚をした夫婦の場合、様々な法的保護を受けられる。また、婚姻届を出していなくても実質的に夫婦として暮らす「事実婚」についても、過去の最高裁判例に基づき、「婚姻に準ずる関係」として一定の法的保護が認められている。
日本弁護士連合会の21年のまとめでは、厚生年金保険法の遺族厚生年金など、200以上の法令が、犯給法と同様の文言で支給対象を規定している。だが、原告側弁護団によると、同性パートナーの場合、一部の自治体の制度を除き、公的給付の対象になる例は「確認できていない」という。
最高裁は今回、犯給法が被害者遺族に給付金を支給する趣旨などを検討し、判断を示すとみられる。同じ文言で対象を規定する公的給付のうち、犯給法に基づく給付金と似た性質を持つものについては、最高裁の判断が影響する可能性がある。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル