古源盛一
北海道釧路市の住宅で2016年1月、おばを殺害して現金を奪ったとして、強盗殺人罪に問われた同市の無職田中治樹被告(51)の裁判員裁判の判決公判が4日、釧路地裁であった。井草健太裁判長は、求刑通り無期懲役を言い渡した。
判決によると、田中被告は16年1月14日、おばの田中弘子さん(当時80)の頭部を鈍器のようなもので数十回殴って殺害し、現金を奪った。
凶器などの有力な証拠がなく、田中被告は一貫して否認。公判では積み上げた状況証拠をどうみるかが争点だった。
田中被告は、犯行があったとされた時間の直後にコンビニのATMで約20万円を自分の口座に入金し、8分後に別のATMで2万7千円を出金。検察側は、入金した現金のうち、1万円札3枚が被害者が前年に下ろした新札と紙幣番号が一致したと指摘していた。直前と直後には、当時使っていた乗用車と似た車が事件現場の方向に走る防犯カメラ映像が残っていた。
井草裁判長は判決で、田中被告が「14日に少なくとも十数万円を何らかの方法で入手した」と指摘。「おいが14日にくる」と被害者から聞いた知人の証言を元に、「犯人でないとすると、訪問すると約束した上で被害者方に向かったのに反故(ほご)にし、被害者方以外の方法で現金を入手して入金した一方、第三者が訪れ、殺害したことになる。偶然が重なり合うのは考えられず、合理的に説明ができないか、説明が極めて困難な事実関係」と述べた。
田中被告は公判で、14日の行動について別の知人に借金を返そうと家を出たなどと述べ、弁護側は「短時間での犯行は困難」などと無罪を主張していた。井草裁判長は「8年後の供述とふまえても場当たり的なものばかりで全体として信用性に欠ける」と退けた。(古源盛一)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル