愛らしい目をしたエゾシカ。北海道では市街地にも現れることがある身近な動物だ。しかし最近は農作物を食べる被害が深刻で、農家を悩ませる存在でもある。そんなエゾシカを独自のわなで捕獲し、農業被害を10年で9割減らした猟師がいる。使ったのはワイヤの輪で鹿の脚をとらえる「くくりわな」。わなに工夫を加えるだけでなく、仕掛け方にも知恵を絞り、「悪いことをするシカだけをとる」という。いったいどんな方法なのか。
北海道の平地にも雪の便りが届き始めた11月初旬。札幌から車で1時間ほど離れた岩見沢市を訪ねた。道道をそれ、軽トラックでたんぼ道を進む。数分して山すそに着くと、カサカサとササがこすれる音がした。茶色の動物が見える。エゾシカだ。2歳ぐらいの雄だった。
エゾシカの右の前脚はワイヤの輪がしっかりとつかまえていて、ワイヤのもう片方は近くの木の幹に固定されている。エゾシカは山の中へ逃げ込もうとするが、木を中心に半径数メートルしか動けない。
「ここでは3桁は捕っているかな」と、わなを仕掛けた原田勝男さん(82)は言う。くくりわなの名人と呼ばれる地元の猟師だ。
一帯はササやぶだが、わなの周囲だけ茶色い地面がむき出しになっている。わなにかかったエゾシカが暴れるため、わなを結んだ木を中心にササがなくなったという。
エゾシカは電気でとどめをさされ、食肉にするために軽トラックで運ばれていった。
増加が続くシカの農業被害
農林水産省によると、野生鳥獣による農作物の被害額は2020年度、全国で約161億円に上り、そのうち3分の1は鹿による。
北海道内でも水稲やテンサイ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル