猟は「公平な戦い」 年間100頭撃つ腕利き猟師の命との向き合い方

 「木の枝を踏み折る音でも警戒しよる」

 つま先から地面を踏み、木々が生い茂る原生林を慎重に歩く。

 11月下旬の午前8時半。気温は6度。吐く息は白い。

 人けのない山で突然、犬の激しい鳴き声が響いた。鳴き声の方へ急ぐ。福岡県福智町の猟師平野八十八さん(77)は肩から斜めに掛けていた猟銃をおろし、人さし指を引き金にかける。

 坂を下り、鳴き声のもとに近づくと、平野さんの猟犬2頭が尻尾を振ってほえながら、茂みに近づいたり離れたりしていた。

 あの中に、イノシシがいる。銃を構える。

 茂みから、目で追えないほどの速さでイノシシが草むらから飛び出し、猟犬に襲いかかった。

 冷静に、引き金を引く。

 その瞬間、爆竹がはじけたような、乾いた銃声が鳴り響いた。

 スラッグ弾を撃たれて弱ったイノシシに、猟犬が一斉にかみつく。平野さんは落ち着いた足取りで近づき、イノシシの首をめがけてナイフを突き刺した。「ギィ、ギィ」とイノシシが断末魔をあげる。

 平野さんはイノシシを専門に40年以上、猟を続けてきた。散弾銃とナイフを持ち、猟犬を連れて1人で山に入る。

 猟が解禁される11月から翌年3月のあいだに、100頭以上のイノシシを4年連続で仕留めた。

 午前7時に起き、天気予報を見て登る山を決める。平野さんが住む福智町の近くには200~900メートルの山がいくつもあるが、それぞれの山のどこに坂ややぶがあるか、細かな地形を隅々まで把握しているという。

 人工林は地面まで日が当たら…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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