行政手続きのデジタル化をめぐって話題になっている「脱ハンコ」の動き。ある町のハンコ屋さんが「肉球スタンプ」を発売し、注目を集めています。
ツイッターで話題に
1898年創業の小野印房(愛知県岡崎市)のツイッターアカウントが13日、こんなつぶやきを投稿しました。
「以前、オーダーを頂いた『猫の肉球スタンプ(立体)』が、無事にセメントに捺(お)され、素敵な玄関が完成したそうです。こんなに上手(うま)くいくなんて!」
添付されているのは、肉球の突起がついたスタンプと、玄関のセメント部分に猫の足跡がついた写真。
本物の猫の足跡ではなく、このスタンプを使ってセメントが固まる前に捺したもののようです。
この投稿に対して、「これは画期的」「すごいクオリティーですね」といったコメントが寄せられ、リツイートは2万、いいねは11万を超えています。
制作者に聞きました
脱ハンコの動きの中で、老舗の新たなる挑戦なのか? 4代目社長の小野洋平さん(44)に尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「そうじゃありません。今年2月ごろ、母の友人から『自宅をリフォームするので作ってほしい』と依頼されたんです」
小野印房では自動車や猫などの一風変わった印影も手がけているため、そのことを知って発注したそうです。
一部の素材や取っ手、削るために使った機械などは通常のハンコと同じものを使っています。
肉球部分はゴムではなく紙粘土。当初は100円ショップで買ったもので試しましたが質感がいまいちだったため、人形用の高級な紙粘土に変えました。
依頼主が飼っている猫の肉球と大きさをそろえるために作り直したり、ある程度深く押せるように木材を足して高さを出したり。
3回目で納得いく仕上がりになり、今年8月に納品しました。
ハンコの技術を生かして
作ったことをすっかり忘れていましたが、先日、実際に玄関に使った写真が送られてきて思い出し、ツイートしたそうです。
脱ハンコの影響については「もともと良かったわけではないので、あまり影響はないですね」と小野さん。
話題になったことについては「この業界はどこの会社も手先が器用な人ばかり。その技を生かしていろんなことに挑戦したら、もっと面白いことができると思います」と話していました。(若松真平)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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