東京ドームでのミサには、死刑が確定して再審請求中の袴田巌さん(83)が姉の秀子さん(86)とともに出席した。
袴田さんは1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人を殺害したなどとして逮捕され、静岡地裁の再審開始決定で2014年に釈放されるまで半世紀近く身柄を拘束された。獄中で書いた日記や手紙を支援者らがまとめた書簡集によると、袴田さんは84年に東京拘置所で洗礼を受け、クリスチャンとなった。今回、教皇の来日を機に弁護団や支援者が「面会」実現を働きかけていた。
袴田さんは、ちょうネクタイに黒いハットをかぶって参加した。秀子さんによると、袴田さんはアリーナの前から6列目に着席。教皇が乗った車が近づいてきた時に秀子さんがハットを取ると、袴田さんは教皇をじっと見つめていたという。対面する機会は無かったが、ミサ終了まで旗を振るなどして過ごした。
東京高裁は昨年6月に再審開始決定を取り消したが、死刑と拘置の執行停止は維持され、袴田さんは浜松市内の自宅で秀子さんと暮らす。長期の拘禁の影響で自らを「ローマ法王」と呼ぶなど精神状態が悪化し、ミサに出席できるかどうか心配されていた。ミサの後、秀子さんは「巌と一緒にやっと行けて、ミサに出席してきました。大変うれしく思っております」と話した。西嶋勝彦弁護団長は「教皇と会ったことが、死刑執行の牽制(けんせい)になるのでは」と期待を込めた。(増山祐史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル