自分は生きていて良いのか。あの脱線事故から25日で16年。葛藤は今も消えない。ただ、自分のできることを少しずつ、周りの人に返していこうと思う。
「おかげで腰が楽になった」。今月16日、大阪府摂津市の市保健センター。利用者の女性(79)の言葉に、職員で作業療法士の中野皓介(こうすけ)さん(34)は照れ笑いを浮かべた。
高齢者向けの健康講座だった。中野さんは自らも体を動かしながら、集まった6人に、体操や簡単なトレーニング方法を教えた。
2005年4月25日。大学1年だった中野さんは、乗客106人と運転士が死亡したJR宝塚線(福知山線)脱線事故に遭った。
認知症の祖母の笑顔が好きで、高齢者と関わる仕事に就きたいと思っていた。作業療法士をめざし、大学がある大阪府大東市に向かっていた。
2両目の後方、3両目との間にあるドア付近に立っていた。突然、周りの乗客が前の方に滑るように流れ、とっさにつり革を強く握った。覚えているのはそこまでだ。
気がつくと、周囲は暗転して…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル