音楽教室でのレッスンで生徒が楽曲を演奏する際、教室は著作権料を払う必要があるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は24日、「払う必要はない」とする判決を言い渡した。支払いを求める日本音楽著作権協会(JASRAC)の上告を棄却し、JASRACの一部敗訴が確定した。
JASRACは2017年、JASRACが管理する楽曲を使った音楽教室について、受講料収入の2・5%を徴収する方針を発表した。
これに対して音楽教室を運営する約250の団体や事業者が「レッスンで使う曲の選択に影響し、日本の音楽文化を損ないかねない」などと反発。「JASRACに徴収権がないことの確認」を求めて提訴した。
演奏に伴う著作権料をめぐっては、最高裁が1988年、カラオケスナックでテープを再生して客らが歌う場合、店は演奏していなくても「演奏を管理して利益を得る施設」として著作権料を支払う必要があると判断。「カラオケ法理」と呼ばれ、その後の裁判や学説に影響を与えてきた。
今回の訴訟でも、2020年2月の東京地裁判決はカラオケ法理に沿って「講師も生徒も教室の管理下で演奏しており、楽曲の利用主体は教室だ」と判断。JASRACの全面勝訴とした。
一方、21年3月の知財高裁判決は、生徒の演奏を「技術向上のための自主的なもの」ととらえ、「利用主体は生徒自身」とした。「管理・利益」は重視しなかった。
元々、カラオケ法理の「管理・利益」という概念には、「あいまいで、ゆるく解釈すれば著作権料を払う範囲が広くなりすぎる恐れがある」との批判もあった。今回の訴訟の二審判決を「カラオケ法理との決別」とみる研究者もおり、最高裁の判断が注目されていた。
最高裁は、地裁と高裁で結論が割れた「生徒の演奏」に論点を絞って上告を受理した。「講師の演奏」は取り上げられず、著作権料の支払いを課される教室側の敗訴で決着している。(根岸拓朗)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル