音楽教室でのレッスン時に講師や生徒が楽曲を演奏する際、著作権料を日本音楽著作権協会(JASRAC)に支払う必要があるかが争われた訴訟の控訴審判決が18日、知財高裁であった。菅野雅之裁判長は、JASRAC側の主張を認めて講師や生徒の演奏に著作権が及ぶと判断した一審判決を一部変更し、生徒の演奏には著作権が及ばないとする判断を示した。
この訴訟は音楽教室を運営する約250の事業者・団体がJASRACを相手取り、著作権料を徴収する権利がないことを確認するよう求めたもの。
音楽教室での演奏が著作権法22条が定める「公衆に直接聞かせることを目的とする演奏」といえるかが争点となっていた。
音楽教室側は、レッスンは数人で行われ、講師と生徒の顔ぶれも固定されるため、不特定多数である「公衆」は教室に存在しないと主張。演奏の目的についても、講師は「演奏技術の手本を示すため」、生徒は「技術を学び練習するため」だと訴えた。音楽教室は営利事業である一方で、学校教育を補完する役割を果たしてきた点も考慮されるべきだとも述べていた。
JASRAC側は、レッスン時の講師と生徒の演奏は、教室を運営する事業者の管理下にあり、演奏によって利益を得ている事業者が楽曲の利用者にあたると主張。契約すれば誰でもレッスンを受けられることから、生徒は「公衆」にあたると訴えた。教室の事業者に支払い義務がある、と結論づけた一審・東京地裁判決を「法律論において堅牢」「説得力に富む」などと評価した。
菅野裁判長は、生徒の演奏は「自らの技術の向上が目的」で、その本質は「あくまでも教師に演奏を聞かせ、指導を受けること自体にある」と指摘。公衆に聞かせることが目的とはいえないと結論づけた。
また、教室を運営する事業者との関係についても、事業者が楽曲を選び、設備を提供していても、生徒は事業者の管理支配下にあるとはいえないと述べ、生徒の演奏を事業者の演奏とみなすことは難しいと結論づけた。講師の演奏については、一審と同様に著作権の徴収対象と認めた。(赤田康和)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル