国が生活保護基準額を2013年~15年に引き下げた改定を巡る訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は30日、愛知県内の受給者13人の生活保護費を減額した決定の取り消しと国家賠償を命じた。長谷川恭弘裁判長は改定について「統計等の客観的な数値との合理的関連性を欠く」として生活保護法に反すると指摘。厚生労働相には「重大な過失がある」との判断も示した。
改定を適法とした20年の一審・名古屋地裁判決を取り消した。同種訴訟は全国各地で30件。控訴審判決は2件目で、改定の違法性が示されたのは初めて。国賠を認めたのは一連の訴訟で初。地裁判決22件のうち、原告側が勝訴したのは過半数の12件。原告側が勝訴する割合が約1割の行政訴訟では、異例の展開をみせている。
国は13年から生活保護費のうち、食費など日常生活に必要な「生活扶助」の基準額を最大10%引き下げ、計約670億円を削減する改定をした。訴訟では、国が改定で用いた二つの「調整」の是非が争点となった。
判決は、基準額の検証などを行う専門家部会が示した数値を基準額に反映する際、国が増減額の幅を二分の一にした「ゆがみ調整」について、国民や専門家に非公表のまま根拠なく行われたと認定。08~11年の物価下落を踏まえて算定した「デフレ調整」については、厚労相が独自の数字を使って受給者の消費実態とかけ離れた下落率を導き出したとし、「専門的知見との整合性に欠ける」と指摘。いずれの調整も違法だと判断した。
その上で、これらの調整を一体的に行ったことは「著しく合理性を欠く」と非難。厚労相の裁量権の範囲を超えた違法な改定だったとし、国家賠償法上の違法性もあると結論づけた。
判決は受給者らが問題となった改定で被った損害の大きさについても言及。「受給者らは9年以上、更に余裕のない生活を強いられ、相当な精神的苦痛を受けた」としつつ、「(減額決定を)取り消しても、その全てが慰謝されるものではない」と述べ、原告13人に1人1万円の賠償をするよう国に命じた。
厚生労働省は「当時の改定について、適法であると認められなかったものと承知している。今回の判決内容の詳細を精査し、関係省庁や被告自治体と協議した上、今後、適切に対応したい」とコメントした。(高橋俊成、伊藤智章、前川浩之)
2013~15年の生活保護基準額引き下げの取り消しなどを求めた訴訟で、名古屋高裁は30日、原告の受給者らの逆転勝訴を言い渡した。「完全勝訴」の旗が掲げられ、「やった」と声が上がった。報告集会では、昨今の物価高が追い打ちとなり、苦しい生活を口にする原告もいた。
集会では弁護士たちが次々に立ち上がり、「歴史的判決」「司法が役割を果たした」などと報告するたび、100人近い原告や支援者から拍手がわいた。
引き下げ根拠とされたデフレ調整などの厚生労働省の手法について、判決は「裁量権の逸脱」「乱用」を指摘。報道されるまで一部の判断過程の説明を怠ったことにも触れており、原告側は「圧勝」と言える展開だった。集会も、一審判決時とはまるで違う雰囲気で、時折笑いも出た。弁護団事務局長の森弘典弁護士も「最低最悪だった一審判決から、きょうは最高最良の判決だ」と語った。
集会の冒頭で団長の内河恵一…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment