山本知弘
国が生活保護費の基準額を2013~15年に最大1割引き下げたのは違法だとして、三重県内の受給者が自治体の減額処分の取り消しを求めた訴訟の判決が22日、津地裁であった。竹内浩史裁判長は減額の背景に「自民党の選挙公約への忖度(そんたく)があったと推認できる」と指摘。厚生労働相の裁量権の乱用を認めた上で、減額は違法だと判断して原告17人への処分を取り消した。
判決は、憲法が保障する「最低限度の生活」を具体的に設定するためには、高度な専門的な考察に基づく政策判断が必要で、専門的な知見を無視した政治的判断をすることは許されないと指摘。その上で、引き下げ決定を巡って厚労相は「考慮すべきではないことを考慮した」と批判した。
具体的には、2012年には、お笑い芸人の親族の生活保護費の受給問題を巡る「バッシング」が起きており、同年の衆院選で自民党は生活保護費の1割減を選挙公約に掲げていたと説明。こうした状況を背景に、厚労相が専門的知見を度外視して拙速に引き下げをしたとした上で、その理由は「政治的方針を実現しようとしたものとみるほかない」と指弾した。
こうした判断の過程や手続きには「全体として過誤または欠落があった」とし、これに基づく各自治体の処分も違法だと結論づけた。
判決後、弁護団長の石坂俊雄弁護士は「かなり突っ込んだ内容で、裁判官が信念を持って書いたと思う」と判決を評価した。
同様の訴訟は全国29地裁で起こされ、原告勝訴が相次いでいる。昨年11月には名古屋高裁の控訴審判決で地裁も含めて国に初めて賠償が命じられた。(山本知弘)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル