生物、代ゼミ問題分析 大学入学共通テスト

生物

特定のテーマに関する文章と複数の資料を解析させる問題が分野横断的に出題され、読解力や思考力が総合的に試された。

―概評―

昨年通り、実験・観察や資料解析を通じて読解力や考察力・解析力など総合的な理解度を試す内容であった。選択肢が絞りやすく取り組みやすい問題があった一方で、読み取る文章が長く解答に時間を要する問題もみられた。

【大問数・設問数・解答数】

・大問数は6で、昨年と同様。

・設問数は23で、昨年より3減少。

・解答数は28で、昨年と同様。

【問題量】

・設問数が昨年より減少したものの、大問数・解答数は昨年と同様であり、実質の問題ページ数が昨年より1ページ増加して29ページとなったため、分量は昨年並みであった。

【出題分野・出題内容】

・多くの大問で、観察材料や特定のテーマを題材として、複数の分野から多くの視点が盛り込まれて出題された。

・ミクロな視点とマクロな視点を関連させた内容が複数の大問で扱われ、広い分野から大きな偏りなく出題された。

・単純な知識問題はほとんどみられず、知識を活用する問題や計算問題、資料解析・実験考察問題が中心であった。

・文章量の多い実験の説明や、長い文章の選択肢など、昨年に引き続き相応の読解力が必要な問題が随所にみられた。

【出題形式】

・A・Bの中問に分かれている大問は第2問のみであった。

・大問ごとに、設問数は3~5問、配点は12~20点と、分量が様々であった。

・第4問問4、第5問問3、第6問問3のような、選択肢のグループを容易に分割することができる問題がみられた。

―難易度(全体)―

昨年並み。取り組みやすい問題がある一方で、解答に時間を要する出題もあった。

―設問別分析―

第1問

シアノバクテリア 難易度:標準

シアノバクテリアをテーマとし、主に生命現象と物質の分野から出題され、進化と系統の分野からも出題された。問1はオペロンの基本的な知識問題。問2・3は実験考察問題。リード文と実験結果から、硫酸欠乏条件で起こる遺伝子発現の変化やα/β複合体の特徴を読み取る。問4は葉緑体の進化に関する系統樹の問題。集光装置の変化が1回とあるので、集光装置の分化の後に分類群が分化したと考えると成立する。また、シャジクモ類は植物に最も近縁な藻類であると考えられている。

第2問

・小問A 霊長類の色覚の進化 難易度:やや難

・小問B ヒトの嗅(きゅう)細胞 難易度:標準

Aは進化と系統の分野からヒトとオマキザルの色覚の比較、Bは環境応答の分野からヒトの嗅覚(きゅうかく)の仕組みについて、それぞれ実験考察をからめて出題された。問1は遺伝子重複による進化に関する読解問題。問2は色覚型の適応に関する実験考察問題。オマキザルの雄は三色型にならない点に注意。問3は実験データの考察に関する文章正誤問題。問4は場合の数の計算問題。2の10乗≒1000の近似は覚えておきたい。

第3問

・葉緑体の光応答 難易度:標準

 植物の環境応答の分野から、葉緑体の光に対する応答に関する実験考察が出題された。問1はフィトクロムに関する空欄補充問題。光発芽種子の知識が活用できる。

 問2は葉緑体の分布と透過率の変化を考察する問題。選択肢のグラフの縦軸は透過率であり、見慣れた吸収スペクトルのグラフとは上下が逆転するので注意。問3は問2に続く実験の考察問題。光をよく受けるほど光合成速度が低下するので、葉緑体の光による損傷が考えられる。また、青色光が弱い環境ではフォトトロピンが機能しない。

第4問

・窒素代謝・共生 難易度:やや難

根粒菌と植物の共生をテーマとし、生態と環境および生命現象と物質の分野からも出題された。問1は生命現象と物質の分野から、有機物に関する知識問題。問2は物質収支に関する知識問題。

 問3は図表の読解問題。地点ごとの窒素とリンの濃度を比較し、不足しているのはどちらかを考える。問4は資料の読解および窒素同化に関する知識問題。問5は根粒菌と植物の共生に関する空欄補充問題。根粒を形成するという植物側の負担を考えれば、空欄ケを埋めることができる。

第5問

・母性効果遺伝子 難易度:標準

 ショウジョウバエの母性効果遺伝子(母性遺伝子)をテーマとし、生殖と発生の分野から出題された。問1は遺伝に関する計算問題。受精卵の発生の有無は、受精卵の遺伝子型ではなく、母性遺伝子を転写する雌の親の遺伝子型によって決定されることに注意。問2は母性因子に関する知識問題。

 問3は母性遺伝子がコードするタンパク質に関する実験考察問題。問4は問3に続く実験の空欄補充問題。問題文と実験1より、変異体の雌から産みだされた卵は腹部が形成されないので配偶子も分化しないことを読み取れれば、選択肢を絞ることができる。

第6問

・縄張り・種内競争 難易度:やや難

縄張り行動に関する実験と資料を基に、生態と環境の分野から種内競争が個体群に与える影響を考察する問題が、対話文形式で出題された。問1は種内競争と種間競争の基本的な知識問題。問2は実験考察問題だが、選択肢は複雑ではなく、実験設定や表を正しく読めれば難しくはないだろう。

 問3は藻類の生産量とも関連した複雑な考察問題で、グラフと縄張りの関連を問題文から推察することが求められた。水深による光強度の変化と藻類の量の関係と、個体群密度および競争による労力の関係の二つを推察する必要がある。(代々木ゼミナール提供)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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