環境省は19日、国内の生物多様性の状況について専門家が分析した最新の報告書を公表した。「生物多様性は過去50年間、損失傾向が続いている」と指摘し、回復に向けた取り組みの強化を呼びかけている。
報告書は「生物多様性及び生態系サービスの総合評価2021」。環境省が立ち上げた検討会がまとめたもので、2010年、16年に続く第3弾。幅広い分野の専門家100人以上の意見が反映されている。
報告書は、森林や農地、都市などにわけて生物多様性の状態を評価。いずれも回復しておらず、損失傾向が続いているとした。全体的に損失の度合いも強いままだった。
生態系を回復させるための提言も盛り込まれた。例えば、都市にある緑化エリアの拡大や活用は、ヒートアイランドの緩和や雨水をためる効果だけでなく、鳥類の羽休めにもなるため、生物多様性の観点からも重要という。食品の地産地消も勧める。農産物や木材の輸入が増えているため、国内の耕作放棄地が増加し、土地が荒れて生態系にも影響が出ているという。
今年、中国で開かれる生物多様性条約締約国会議(COP15)で、30年に向けた生物多様性の世界的な目標が決まる見込み。これに基づき国内の目標や取り組みを策定する際に、今回の報告書も科学的に重要な知見として活用されるという。(戸田政考)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル