生物学者が早生まれに授ける秘策「準備はできている」

 プロ野球とJリーグの選手には、早生まれが少ないとのデータがある。年度の区切りによる体格差などが影響しているとされる。乗り越えるには――。生物学者の佐藤克文さん(52)が、早生まれのあなたにエールを送る。(編集委員・中小路徹

 さとう・かつふみ 1967年、宮城県生まれ。東京大学・大気海洋研究所教授。ペンギン、アザラシ、ウミガメなどに小型記録器をつける「バイオロギング」という観察手法で、動物の行動生態を研究している。著書・共著に「サボり上手な動物たち」「巨大翼竜は飛べたのか」など。中学2年の国語教科書(光村図書)に「生物が記録する科学―バイオロギングの可能性」が載る。

拡大する東京大・柏キャンパスの大気海洋研究所で、実験用の魚が泳ぐ水槽の横に立つ佐藤克文教授=千葉県柏市

 人気スポーツで早生まれは不利だと、佐藤教授がデータに基づき、朝日新聞のオピニオン面「私の視点」に投稿したのは2003年。欧州のプロサッカー選手と生まれ月との関係でそうした傾向が報告され、その年の3月に第1子が生まれる前に日本でも調べてみたそうだ。

 「プロ選手として身を立てるための要素には、遺伝や努力などだけでなく、偶然の環境もあるということ。偶然の環境に左右されるという点では、『人間も動物なんだな』と、生物学者としても興味深かったです」

 実際、どれくらい差があるのか。今季でいえば、プロ野球12球団の日本出身の支配下登録選手721人の生まれ月を3カ月ごとにみると、4~6月は31・6%、7~9月は29・3%、10~12月は21・5%と比率が下がっていき、1~3月は17・6%。J1の18クラブの登録選手510人も、33・3%→31・6%→18・8%→16・2%と下がる。

 月ごとの出生率を合わせて考えても、佐藤教授によると、統計的に「圧倒的に有意な偏りあり」なのだという。

 「プロ選手向きの遺伝的特性を持つ子どもが、4~9月に偏って生まれるとは考えがたい。野球やサッカーでは、勝ちにこだわるチーム編成や采配をする中で、体力が劣る早生まれの子が、補欠が定位置となって劣等感を持ってしまい、球技から離れてしまう。かわいそうだなと思うんです」

 例えばサクラマスは、ここから新たな物語が始まるという。

 「サクラマスは川で産卵し、稚…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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