【群馬】いつもと変わらない通学路のはずだった。
11月1日午前6時45分ごろ、高崎市の高校2年、東野此花(このか)さん(16)は、自転車で家を出た。通学路をこぐことわずか1分ほど。ふと田んぼ沿いの用水路に目をやると、1足のサンダルがぷかぷかと浮いていた。
この日の最低気温は10度ほど。「こんな寒い日に誰かいるのかな」。そっと用水路をのぞいてみた。するとサンダルのそばに、80代の男性が横たわっていた。
体の半分が水につかっており、裸足の状態。「用水路に落ちて、サンダルが脱げたのか」。助けなければ、と思った。
「大丈夫ですか」と声をかけたが反応は全く無い。男性の体は重く、引き上げることもできなかった。「助けて」と何度も叫んだ。そのとき、そばをトラックが通りかかった。
東野さんは道の真ん中に立ち、トラックを止めた。運転手の男性と、集まった近隣住民が男性を引き上げ、消防に通報してくれた。
東野さんは消防が駆けつけるまでの間、着ていたジャンパーを男性にかぶせてあげた。服がずぶぬれで寒そうだったからだ。男性は呼びかけに反応することなく、救急搬送されていった。
1限目の授業には遅刻した。男性のことが気になり、授業内容は耳に入らなかった。帰宅後、父から男性の命に別条がなかったことを聞いた。ようやく気持ちが落ち着いた。
東野さんは今月6日、高崎北署から感謝状を受け取った。「倒れている男性を見て自然と勇気がでた。命が救えて本当によかった」。吉田武署長は「発見が遅れていれば、低体温症で死につながっていたかもしれない。サンダルを見て『おかしいな』と思える機転がすばらしい」とたたえた。(吉村駿)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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