JR北海道・留萌線(深川―留萌)の石狩沼田―留萌(35・7キロ)が31日、最後の運行を終え、112年余りの歴史に幕を閉じた。地域経済や住民の暮らしを支え、映画やドラマの舞台としても親しまれた。各駅や沿線では住民や鉄道ファンが別れを惜しんだ。
留萌市の留萌駅発の最終列車は午後8時20分、別れを惜しむ住民に見送られて深川へと走り出した。
日中は各駅でセレモニーが行われた。留萌駅では、留萌線で深川市の高等看護学校へ通った井上愛心(ななか)さん(19)と越後谷侑久(たすく)さん(19)、侑久さんの姉で3月に同校を卒業した愛香(まなか)さん(21)が、市民を代表して大田稔駅長らに花束を贈った。
留萌線の思い出について井上さんは「秋に車窓から見える夕焼けが一番好き」、春から留萌市立病院で働く愛香さんは「帰りに列車が遅れて待たされたのも懐かしい」。2年生になる井上さんと侑久さんは4月から、深川行きの乗り合いタクシーを利用する。
恵比島駅(沼田町)では、高校通学に留萌線を利用した大学生の谷水里咲(りさ)さん(21)と歯科衛生士として就職予定の高橋瑞希さん(21)が、同駅を管轄する中沢嘉之・深川駅長に花束を手渡した。
高校が滝川の谷水さんは「列車が遅れて深川で乗り換えができず、遅刻したこともあった」、深川の高校に通った高橋さんは「この駅にも列車にも思い出がたくさんある。なくなるのは寂しい」と語った。
横山茂町長は「この地で育てられた1人として、路線を存続できなかったことを住民のみなさまにおわび申し上げたい」と言葉を詰まらせた。
ホームにはカメラを構える鉄道ファンが列を作り、乗客と手を振り合っていた。駅の隣には、NHKの朝の連続ドラマ「すずらん」で「明日萌(あしもい)駅」として使われたロケセットが保存されている。昭和初期の風情が残る木造「駅舎」では留萌線の記念グッズが販売され、にぎわった。
留萌線は通常、ディーゼル1両編成。乗り納めをする乗客に備えて、JRは2両編成で運行してきたが、最終日は4両編成にした。それでも列車は混み合い、おもな駅は鉄道ファンらであふれた。線路沿いのあちこちで、「最後の雄姿」にピントを合わせる人たちが見られた。
高倉健主演の映画「駅 STATION」のロケで使われた留萌駅は取り壊される予定。明日萌駅は地元が利用方法を模索している。(三木一哉、奈良山雅俊)
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〈JR留萌線〉 1910(明治43)年、深川―留萌(50・1キロ)開業。留萌駅は日本海北部の物流拠点で、その後、日本海に沿って北に羽幌線が延び、南は増毛駅まで線路が敷かれ、石炭や木材、海産物などを運んだ。羽幌線は87(昭和62)年、留萌―増毛も2016年に廃線。残る深川―石狩沼田(14・4キロ)は3年後の26年3月末に廃線となる。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル