朝食の定番「焼きザケ」。かつては秋に取れた大量のサケを塩ザケにして保存することで親しまれてきた。
漁獲量の8割を占めるのが北海道だ。だが、そのサケに異変が起きている。
昨年9月下旬、北海道東部の豊頃町。大津漁協の中村純也組合長(53)は、港から見える光景に不安を覚えた。海が、泥が混じったように茶色になっていた。赤潮だった。定置網に死んだ魚がかかり始めた。
本来なら赤いはずのエラが、白くなっていた。漁協はサケの選別に追われた。死んだサケは、シーズン全体では1万匹以上になった。年間取扱高の7~8割を占める昨秋のサケの水揚げは、前年の半分以下の約500トンにとどまった。資源維持のために続けている孵化(ふか)放流事業のための卵も確保できなかったという。
大津特産の脂がのった秋サケと地元の野菜を使った「鮭飯寿司」は、「浜のおふくろの味」として全国から好評を得る地元自慢の一品だ。だが、中村組合長は今年の秋サケ漁を前に心穏やかではない。「30年以上漁をしているが、あんな赤潮は見たことがない。今年も来たら持ちこたえられない。何か想定外のことが起きているのではないか」
根室地方から中部の日高地方にかけて北海道東部は昨年9~10月、大規模な赤潮被害に見舞われた。道によると、被害は2月末時点で、サケ約2万7900匹(約7400万円)、ウニ約2800トン(約73億6700万円)に上っている。ツブ貝やホッキ貝、コンブなどほかの魚介類にも及び、被害額は100億円以上と言われる。
赤潮の原因はどこにあるのか。
被害100億円超の赤潮、驚きの現象
「図を描き間違えたんじゃないか」。水産研究・教育機構水産資源研究所の黒田寛・寒流第1グループ長は、昨年の海水温の観測データを作図して目を疑った。
7月末から8月初め、北海道の東方の広い海域で平年値より最大6度以上も高かった。衛星観測が始まった1982年以来、最高水温で範囲も最大だった。これが「海洋熱波」だ。
海面温度が極端に高い状態が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル