北九州地域救急業務メディカルコントロール(MC)協議会の伊藤重彦会長(北九州市立八幡病院院長)は23日、「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」の会合で、病院の救急救命士が搭乗する病院救急車の試験運用の結果を報告した。地域MC協議会の体制下で、医師が救急車に搭乗した病院救急救命士に助言などを行うのは、全国で初めてだという。病院の救急救命士の活用は「消防職員の労働環境改善にもつながる」としている。【新井哉】
都道府県や二次医療圏などの救急医療の現場では、医師らで構成するMC協議会が、病院前救護の救急処置基準(プロトコール)の作成などを担っている。特に地域MC協議会は、救急搬送患者の医療機関選定に関する検証や指導・助言を行い、地域の救急医療体制の一角を支えている。
この日の会合で、伊藤会長は、厚生労働科学特別研究事業の研究の成果として「消防機関以外に属する救急救命士が搭乗する消防救急車以外の患者等搬送者を活用する、緊急走行しない、緩やかな患者搬送システムを構築した」などと報告した。新たに構築したオンラインMCの下で、緊急度が低かったり、病状が安定していたりする患者を対象に、救急救命士が搭乗する病院救急車による「迎え搬送」の試験運用を行い、緊急度の低い患者搬送の安全性を確認したという。
他の場所から自らの病院に患者を転院させる「迎え搬送」を巡っては、消防機関の救急車を使うケースが少なくない。しかし、タクシー代わりに使うといった本来の救急業務の範囲外とみられるケースが問題視されており、転院搬送時の救急車の適正利用や、病院救急車の活用が求められている。
総務省消防庁によると、2017年の転院搬送件数は53万4072件で、前年よりも1万2408件増えた。17年の救急出動件数(634万5517件)のうち転院搬送が8.4%を占めている。転院搬送を減らせれば、救急隊員らの負担軽減にもつながるため、救急車の適正使用や効果的な対策の立案が急務となっている。
こうした状況などを改善しようと、伊藤会長らは、「迎え搬送」で病院救急車を活用する救急搬送システムを構築した。18年11月から19年2月にかけて行った試験運用では、MC協議会が認定した救急救命士14人が搬送業務に参加。搬送対象患者の緊急度の判断は適切で、「迎え搬送」の64件のうち、搬送中のオンラインMCによる助言があったケースは1件(酸素投与量の変更)だけだった。伊藤会長らが構築したシステムが他の地域MC協議会でも採用されれば、消防機関の救急車を転院搬送に利用するケースが減るため、消防職員の労働環境の改善につながる可能性がある。
転院搬送や院内の救急業務への病院救急救命士の活用について、伊藤会長は、働き方改革とタスクシフティングの観点から、医師や看護師などの病院職員の労働負担の平均化も図れるとの見解を提示。「今後は、MC体制下に病院内で病院救命士による救急救命処置が実施できる環境整備が急がれる」としている。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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