大久保泰
【千葉】森の中の音を豚に聞かせて育てたら、癒やし効果が出るのでは――。音響機器大手のJVCケンウッド(本社・横浜市)と県立旭農業高校(旭市)が連携して研究を進めている。音の中で半年近く育てた豚を先月24日に初めて試食すると、味ははっきり評価できなかったが、豚の体重は増加していた。
この取り組みを持ちかけたJVCケンウッドは独自の音響システムによって、森の中の音が人に癒やしをもたらすことを実証している。「豚もストレスを減らすことで味や成長を変化させられないか」。旭農業高校の豚舎で昨年9月から、鳥のさえずりや川のせせらぎを24時間流してきた。音は栃木県の奥日光にある森の中で秋に収録した。
生後30日から音を聞かせた豚は3月上旬に出荷された。通常の方法で飼育した豚と比べると、ストレスの指標になる「被毛中コルチゾール」の濃度に違いはなかった。豚舎が広く、ストレスが小さい環境だったと考えられるという。一方、音を聞いた豚の体重は2カ月余り経ってからの増加率が高くなり、最終的には10%近く重くなった。
試食会で、畜産科の教諭と2年生4人が甘さや柔らかさの違いを審査した。今後詳しく分析する。
実家が養豚業の石毛康(こう)多(た)さん(17)は「味の違いは分からなかったが、いろんなデータに違いが出てくれば飼育現場の参考になる」。養豚担当の高沢春平(しゅんぺい)教諭は「音を聞いていた豚はエサへの反応が強く、本能的な感じがした。体重の伸びが10%ほど違ったのは驚いた」と話した。
コルチゾールの分析に協力した千葉科学大学(銚子市)を含め、三者で検討しながら調査する。
JVCケンウッドと旭農業高校を仲介したのは、旭市観光物産協会。市の豚の生産額は全国2位で、「九十九里レザー」と名づけた豚革のブランド化も進めている。水野竜也事務局長は「豚に優しい育て方は海外輸出をする上で必須条件になる」と期待を寄せている。(大久保泰)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル