厚生労働省は12日、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行に備え、発熱した患者が両方の検査、診療を受けることができる「診療・検査医療機関」に指定された施設が10日時点で全国に2万4629ある、と公表した。
厚労省は同時流行に備え、都道府県に10月中に指定機関を整備するよう求めていた。最多は東京都の3千施設、最少は岩手県の114施設。都道府県が推計した流行ピーク時の1日の検査需要は46万568件(コロナ6万8325件、インフルエンザ39万2243件)。
医療機関名を公表するかどうかは都道府県が決めるが、非公表や一部の公表にとどまる自治体も多い。患者が殺到することや風評被害を心配する医療機関が多いことが背景にある。
この仕組みでは発熱患者はまず、かかりつけ医や、都道府県が設ける「相談センター」に電話する。指定機関のリストは自治体や医療機関で共有し、かかりつけ医などに電話で問い合わせれば紹介してもらえる。
厚労省は「1日フルで対応する医療機関もあれば輪番もあり、数字だけで評価できない。少なくとも現段階で、各都道府県がきちんと指定を進めている」とした。医療機関名の公表については、各地域で十分議論して判断するよう求めた。(姫野直行)
数足りず、地域差も
発熱したら身近な医療機関で速やかに検査を受け、「目詰まり」なく適切な医療にたどりつけるのか。医療現場は備えを進めるが、課題を指摘する声もある。
東京都は全国最多の3千施設を指定した。だが都医師会の角田徹副会長は「まだ数が足りない。可能な限り全てのかかりつけ医は指定を受けてほしい」と話す。都内には内科の診療所だけでも約8千施設ある。過去のインフルエンザ流行時の検査件数から、インフルと新型コロナが同時流行すると最大で1日約6万4千件の検査が必要になると推計される。3千施設だと、単純計算しても1医療機関で1日20件程度の検査が必要だ。指定機関に患者が殺到し、速やかに検査を受けられなくなる恐れもある。
184施設が指定された秋田県。9保健所別に見ると、秋田市などの中心部では比較的多いが、地域差がある。PCR検査が可能で、新型コロナを専門に診療する「仮設診療所」も11カ所設けるが、県の担当者は「手を挙げてくれたところが多いとは言えない」。県内の感染者数が現時点では少ないことに加え、院内感染や感染者が出た場合の風評被害への不安が背景にあるとみる。病院と比べクリニックは狭く、動線を完全に分けられない。陽性者が出た場合の手続きが煩雑だとの声もあるという。
浜松医科大の尾島俊之教授(公衆衛生学)は「発熱は最もありふれた症状で、多くの医療機関が診なくなれば地域の医療が回らない。可能な限り全ての施設が受け入れるのがあるべき姿」と話す。規模の小さな診療所などで感染への懸念が強いことも理解できると話す。「安全に唾液(だえき)で検査できる体制や、個人防護具の提供など、行政側のサポートが欠かせない」
指定を受けた東京都千代田区の…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル