登山者が愛した安達太良山のくろがね小屋 建て替え前の最後の1日

【動画】安達太良山の「くろがね小屋」、最後の1日に密着=田中紳顕、滝口信之撮影

 福島県安達太良山(標高1700メートル)にある「くろがね小屋」は、掛け流し温泉と名物のカレーで登山者らの疲れを癒やしてきたが、老朽化に伴う建て替えのため3月末で営業をいったん終えた。2年後に新たな建物で再スタートの予定だ。「最後の一日」に密着すると、登山者らのさまざまな思いがあふれた。

 標高約760メートルの登山口から雪を踏みしめながら2時間。千メートル級の山々が連なる安達太良連峰に抱かれるように、くろがね小屋は立っていた。ふもとの岳温泉の源泉が近くで湧き、特有のにおいが漂う。

 3月31日午前5時。標高1350メートルにある小屋は高さ1メートルの積雪に囲まれ、気温は3度。頭上には雲一つない青空が広がっている。

 厨房(ちゅうぼう)では、管理人の田畠翔さん(35)らが朝食の準備をしていた。

 小屋の外では、川崎市の富田昌宏さん(60)が写真を撮りながら、「もったいないよな。建物の見た目は大丈夫そうなのに……」と漏らした。泊まるのは初めてで、数日前にキャンセルが出て急きょ訪れた。前日夜は常連客らと酒を酌み交わしながら、全国各地の山の話をした。「最後の最後に泊まれてよかった。次の小屋を楽しみにしたい」

現在の小屋は1964年に営業を始めました。建て替え前、最後の営業日に訪れた人に思い出を語ってもらいました。

 1964年に現在の小屋で営業を始めて以来、白濁した温泉と夕食に出るおかわり自由のカレー、温かいもてなしが登山者らに愛されてきた。前泊して山頂を目指したり、温泉目当てに来たりと年間5千人が利用した。

 色あせた床や壁、歩くと「ギシギシ」と鳴る床や階段が歴史を物語るが、雨漏りや土台の腐食など老朽化が進んだ。トイレの排水を地中に浸透させる処理法も改善の必要があったため、現在の場所で建て替えることになった。

 午前6時半。登山客らは小屋…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment