横断歩道を歩行中、車にはねられたのは横断歩道の白線が摩耗して消えていたためだなどとして、川崎市の男性(66)らが道路標示を管理する神奈川県などに損害賠償を求めた訴訟は24日、横浜地裁川崎支部で和解が成立した。「摩滅が事故の一因になった」とする裁判所の和解勧告を、県が受け入れて損害賠償金の1割を負担する。
事故は2018年10月31日午前10時55分ごろ、京浜工業地帯の川崎市川崎区水江町、片側2車線の直線路で起きた。
原告側によると、男性は横断歩道を歩行中に、運送会社の男性が運転するタンクローリーにはねられ、頭の骨が折れるなど、大けがを負った。神経系統の機能などに障害を残し、随時の介護が必要になったという。
この事故の刑事裁判では、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の罪に問われた運転手が19年、同支部で無罪(求刑禁錮1年)を言い渡され、確定した。
判決は「車の進行方向の横断歩道を示す路面の白線標示は完全に消失していた。現場が横断歩道上であると認識するのは困難」などとし、「横断歩行者の予見は可能ではなかった」とした。また、検察側が「被告は過去に現場を複数回通行していた。横断歩道と認識できた」と主張した点については、「道路標示を記憶することを運転者に義務付けすることはできない」と退けた。
これを受け、原告側は20年、県と運送会社を相手取り、計約1億4千万円の支払いを求めて提訴した。「横断歩道の道路標示は摩耗して消滅していた。県(県公安委員会)は横断歩道の管理者で瑕疵(かし)があった」と主張した。
県側は「(進行方向の)標示は摩耗している状態だったが、反対側の標示は一部摩耗で、全体として視認は十分だった」と争った。
事故の半年前には現場近くの会社関係者から、横断歩道の補修をするように要望があった。県側は「現場を見た担当者は、総合的に十分、認識できる状態と判断していた」と主張し、事故当時、補修はしていなかった。
同支部は今年6月に和解を勧告した。県によると、運送会社には「運転手は現場の道路を幾度も往復して、道路標識などもあることから横断歩道の存在を認識していた」と指摘し、県についても「事故前に横断歩道の道路標示の摩滅は連絡を受けていた。状況を認識できた。摩滅が事故の一因になったと認められる」とした。
損害賠償金は計6700万円。県が1割(670万円)、運送会社が9割(6030万円)を負担する。(佐藤英法)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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