集中豪雨をもたらす「線状降水帯」の予測情報の発表が6月に始まるのを前に、気象庁は18日、情報の詳細を公表した。予測は全国を11地方に分けた広域で、線状降水帯による大雨の可能性が高まった場合、その半日ほど前から伝える。現状、予測した地方で発生する的中率は4分の1程度というが、同庁は豪雨災害への危機感を少しでも早く高めてもらうため活用を呼びかけている。
線状降水帯は、水蒸気を大量にふくんだ空気が狭い範囲に流れ込んで同じ場所で積乱雲が次々と発生し、線のように連なることで、短時間で集中的な豪雨をもたらす。
同庁は6月から、実際に線状降水帯が発生した場合に出す「顕著な大雨に関する情報」の発表基準を満たすような雨量や雨域が発生する可能性が高まった場合、発生の半日前から6時間前に予測情報を出す。
気象庁は警報や注意報に先立って警戒を呼びかけるためにホームページなどで発表している「気象情報」で示す。これを受け、住民は、テレビやネットで伝えられる報道機関のニュースで情報が出たことを知ることができ、少し先の避難行動などを考えることができる。自治体は、早めに避難所の開設準備などを進めることが期待されている。
予測情報が出るのは早い段階のため、その時点の気象状況はケースによって異なるとみられる。このため同庁は、予測情報は「大雨災害への心構えを早めに高めてもらう」ものと位置づけている。長谷川直之長官は同日の会見で、「線状降水帯がひとたび発生すれば災害に結びつくおそれがある。発表されれば危機感を高めていただきたい」と述べ、避難所や避難経路の確認などを求めた。
こうした予測情報を出すことになった背景には、近年、線状降水帯の発生に伴い大きな被害が出る豪雨災害が相次いでいることがある。2015年9月、鬼怒川が決壊し茨城県常総市で大規模な浸水被害をもたらした関東・東北豪雨や、18年7月の西日本豪雨、熊本・球磨川が氾濫(はんらん)した20年7月の豪雨などでも発生している。
線状降水帯の予測には空気中の水蒸気量のデータが必要だが、観測機器が少ないなどの理由で予測は難しかった。同庁は観測網を整備し、スーパーコンピューター「富岳」も活用して予測を可能にしたが、精度は発展途上にある。
現状では「九州北部」「中国」といった広域での予測にとどまるほか、予測を出しても発生しない「空振り」や、発生を予測できない「見逃し」も想定される。同庁が19~21年に「顕著な大雨に関する情報」の発表基準に達した事例で検証したところ、予想した地方で発生を的中できたケースは4回に1回程度。「見逃し率」は、3分の2程度だったという。
同庁では今後も予測精度の向上に取り組み、来年には発生30分前での予測を目指す。29年には、市町村単位での危険度を半日前から地図上でみられるようにする構想だ。(吉沢英将)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル