岩手県釜石市の民間の動物保護施設「保護猫アンドゥ」に8月下旬、一匹の野良猫が預けられた。茶色いしま模様の体にエメラルドグリーンの大きな目が愛くるしい。でも、目が見えず、耳も聞こえない。今までどうやって生きてきたのか。そしてこれからは。いろいろ考えさせられる。20~26日は動物愛護週間。
猫はオスで、推定8歳。預けられた時、テレビで将棋の藤井聡太三冠が話題になっていたことから、「そうた」と名付けられた。しかし、猫はそんな名前で呼ばれても、気づかない。
7月7日の七夕。釜石市の民家付近で保護された。障害があり、生きていく力がないと判断されると殺処分になる事例もあるが、釜石保健所はアンドゥを頼った。体が不自由だったり、病気だったりしても預かってくれる施設に期待した。
アンドゥにとって、これほど障害の重い猫は預かったことがなかったという。一方で、そうたは、ハンディがあっても生き生きとしていた。空間を把握する力があり、トイレも決まった場所でできる。首を伸ばし左右にゆらし、天を仰いで窓から入ってくる風を感じ取って方角を知る。一歩一歩確かめるように歩き、調子に乗って少し動きを速めると、ゴツンといすの脚に頭をぶつけ、可愛く驚く。
日常的に50匹以上の世話をするアンドゥ。次々に猫が預けられるため、責任者の鈴子真佐美さんは多忙だが、通常施設に見に来てもらい、相互の相性を見ながら譲渡する。そうたの場合も同様に譲渡先を探す。音や光に反応することがないせいか、落ち着いた性格。「手のかからない子です」
動物は懸命に生きている。人間のほうも、責任を持って飼ってほしい。鈴子さんは日々そう願う。連絡は、アンドゥ(0193・22・1897)へ。(東野真和)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル