目に見えぬ脅威… 懸念された「3密」矯正施設にも到達した新型コロナ(産経新聞)

 大阪拘置所(大阪市都島区)に勤務する男性刑務官の新型コロナウイルス感染が判明し、国内の刑務所や拘置所などの矯正施設に緊張が走っている。大阪拘置所では全職員の5分の1にあたる119人を自宅待機に。施設の多くは、感染リスクを高める密閉、密集、密接の「3密」と特徴が合致する。過去にはインフルエンザの集団感染も起きている。「目に見えぬ脅威」に、各施設が難しい対応を迫られている。(土屋宏剛、桑村朋)

【写真】刑務官の感染が判明した大阪拘置所

 ■5分の1出勤できず

 「職員、収容者の健康状態把握に努め、感染拡大の防止対策に全力で取り組みたい」。森雅子法相は6日の記者会見で刑務官の感染についてこう述べ、集団感染が発生したクルーズ船に派遣された自衛隊の指導を受けながら対応に当たるとの考えを示した。

 大阪拘置所によると、刑務官は5日に感染が判明。このほか同僚2人も体調不良を訴えている。

 集団感染を防ぐため、同拘置所は5日、施設内の消毒を実施。刑務官と接触した可能性がある職員119人を自宅待機とし、収容者40人も単独室に隔離する措置を取った。

 同拘置所の職員数は約540人。今回の感染判明に伴い、全職員の5分の1が自宅待機となる。同拘置所の清水政明調査官は「これ以上感染者が増えると、施設運営に支障が出るおそれがある」。法務省は今後、近隣施設から応援職員を派遣するなどして対応する。

 ■対策徹底しても…

 狭い空間に一定数の受刑者らが共同生活する矯正施設では感染症が瞬く間に蔓延(まんえん)する危険性が常にある。

 昨シーズン、愛知県や島根県内の刑務所ではインフルエンザの集団感染が発生。受刑者と職員合わせて100人以上が発症する事態に陥っている。

 それゆえ、同拘置所でも新型コロナ対策は徹底していた。施設内の各所に消毒液を設置し、職員は1日に10回程度の手洗いを実施。勤務中は全員がマスクを着用していた。また外部から新規収容者を受け入れる際は、体温を瞬時に測定できるサーモグラフィーカメラを活用。体調不良や発熱が判明すれば集団房には入れず、単独室で数週間隔離するなどしていた。

 それでも感染は食い止められなかった。海外ではすでに、中国の刑務所で500人以上の集団感染が発生。面会制限を設けたイタリアの刑務所では暴動が起きた。集団感染が深刻化したイランでは約7万人の囚人を刑務所から一時釈放する措置が取られたという。

 ■「もっと危機感を」

 「矯正施設での感染は予想されたこと」と話すのは元刑務官で作家の坂本敏夫氏。「拘置所などは『3つの密』に当てはまる。まだまだ危機意識が足りないのではないか」と指摘する。

 また収容者の持ち物を預かる係は特に注意が必要とし、「本や手紙の差し入れも含め、外部からの物品受け取りは禁止すべきだ」と強調。「受刑者に感染が広がれば隔離病棟が不足する恐れもある。そうした事態は絶対に防がなければならない」と力を込める。

 感染症に詳しいけいゆう病院感染制御センター(横浜市)の菅谷憲夫センター長は「国内の感染者が増えれば(矯正施設での)感染リスクはさらに高まる。警戒を維持してほしい」と述べた。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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