本当なら、いまごろは憧れの客室乗務員(CA)として、全国の空を飛んでいるはずだった。新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから15日で1年。22歳の女性の人生は、一変した。
「訓練生のみなさまは、いずれかの選択をお願いします」
国内の格安航空会社に入社して半年近くたった昨秋だった。会社のオンライン会議で突然アンケートが示された。読み進めていくうちに頭が真っ白になった。
示された選択肢は三つ。①希望退職②配置転換③訓練再開までの休業(訓練が再開しない場合は解雇)
日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)はすでに国内便を4~5割減便にしていた。会議では、運航規模がコロナ前に戻らなければ、「訓練は再開しない」と強調された。CAになるのはあきらめるように――。「事実上、そんな通告だ」と感じた。女性は1年ごとの契約社員。「どう生きていけばいいのか」
CAになるのは幼いころからの夢だった。
小学生のとき、初めて1人で飛行機に乗った。心細さや緊張で固まっていた自分に、CAが特別におもちゃを渡してくれた。やさしさに感動した。
CAになるのに必要だからと、中学高校では英語に力を入れ、大学生では北米に留学もした。航空会社数社の採用試験を受け、2019年夏、内定をつかんだ。CAの制服に袖を通す自分の姿をイメージし、胸を躍らせていた。
歯車が狂い始めたのは昨年1月。中国で見つかった新型ウイルスが国内でも広がり始めた。まだ「自分には関係がない」と思っていた。2月には、横浜港に停泊中の大型クルーズ船で集団感染が発覚。千葉県内にアパートを借りたが、4月の入社式は中止となり、訓練も先延ばしに。引っ越さずに地方の実家にとどまることにした。
5月下旬。会社から、航空需要…
【1/25まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment