平安時代末期から室町時代後期に栄華を誇り、「幻の古陶」とも呼ばれる石川県珠洲市の伝統工芸品「珠洲焼」。能登半島地震で多くの作家が被災し、約20軒ある窯のほとんどが全壊した。作家団体「創炎会」代表の篠原敬さん(63)は、「次世代のためにも諦めない」と決意を示す。
篠原さんが営む「游戯窯(ゆげがま)」でも、窯が全壊した。昨年の地震でも壊れ、11月に直したばかり。1月20日に初窯を控えていたが、今回の地震で、一度も使うことなく再び全壊してしまった。
工房に保管していた数百点の作品も落下し、ほとんど割れてしまったという。
「灰黒色」と呼ばれる独特の色みを持つ珠洲焼。篠原さんのこだわりは、薪窯での焼きだ。管理しやすいガス窯も広まっているが、「薪の火に委ねることで珠洲焼本来の風合いが生まれる」という。
現在、篠原さんは同県野々市市で避難生活を送る。3、4日おきに珠洲に来て、窯の再建に向けて片付けなどをしている。
珠洲焼作家は現在約50人いるが、ベテランの中には、今回の地震被害で引退を考えている人もいるという。篠原さんも引退が頭をよぎることもある。
しかし、篠原さんには、希望がある。県内外から珠洲に移住してきた若手作家8人から、「一緒に珠洲焼を残しましょう」と連絡があった。
全国のファンや関係者からも応援の声が届く。篠原さんは「自分一人ではない。次世代のために、薪窯を必ず残す。『珠洲』の名を冠した焼き物で地域全体の復興につなげたい」(金居達朗)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル