《午前の被告人質問で、亡くなった甲Eさんの弟と、重傷を負った尾野一矢(かずや)さん(46)の父、剛志(たかし)さん(76)からの質問に答えた植松聖被告。休廷を挟んで午後の公判では、裁判員による被告人質問に移る》
《午前の法廷では直接、遺族や被害者家族から問いかけられたためか、植松被告は目を細めるようなしぐさをするなど、やや疲れたようにも見える》
裁判員1「犯行前に新宿の焼き肉店で、女性と食事をした際『昔の自分は嫌いだったが、いまの自分は好き』と話したそうですが、昔の自分はどこが嫌いだったのですか」
植松被告「下世話な話になってしまいますが、(女性が知人の男性に対して送った)LINEのやりとりではボロクソにけなされてしまいましたが、女性が家に泊まりにきたことがありました。そのとき、何もできなくて情けないなあと思いました。(女性を)満足させられる自信がなかったのだと思います」
《薄笑いを浮かべながら答える植松被告。過去にこの女性との間にあったやりとりを思い出しているようだった》
裁判員1「デリヘル嬢との別れ際、『僕のことを忘れないでください』といったそうですが、これはなぜですか」
植松被告「恥ずかしいことを言ってしまったなと思います」
《裁判長が「もうよろしいですか」と裁判員1に確認を取ったうえで、裁判員2が質問を始めた》
裁判員2「大学卒業後、就職した会社をやめてしまった理由は何ですか」
植松被告「仕事が大変だったからです。下請けという仕事は割に合っていないと思いました。本社からの下請けというのは搾取されてしまうと思いました」
裁判員2「交際相手の女性に対し、イルミナティカードについて6の数字にこだわりをみせていたようですが、なぜ6にこだわったのですか」
植松被告「666は悪魔の数字で、人間はみな悪魔だと思います。優しい悪魔になれればいいなと思います」
裁判員3「やまゆり園には防犯カメラがついていて通報されるとは思わなかったのですか」
植松被告「はい、そう考えていました」
《裁判員の質問が続く。事件を起こしたことについて「短絡的だ」と意見を投げかけられる場面もあったが、植松被告は気にする様子もなく、変わらず自説を唱え続ける》
裁判員4「事件から3年半が過ぎました。社会はあなたが考えていたように変わりましたか」
植松被告「重度障害者との共生社会に傾いたのではないかと思います」
裁判員4「重度障害者は時間とお金を奪うから殺害してしまえというのは、私は短絡的だと思います。ほかに解決策はなかったのでしょうか」
植松被告「ベストを尽くしたと思っています」
裁判員5「安楽死についてうかがいます。もし、日本で安楽死が合法化されていたとしたら、今回の犯行を実行していましたか」
植松被告「してなかったと思い…いえ、分かりません」
《ここまで比較的淡々と答えていた植松被告だったが、この質問は想定していなかったのか、言いよどむ様子がみられた》
裁判員5「やまゆり園に勤務しているとき、入所者家族から悪口をいわれたことはありましたか」
植松被告「職員として(同園に)入ったとき、(そういったことがあると)聞きました」
裁判員5「それは重度障害者に対する考えに影響はありましたか」
植松被告「のんきだなあと思いました」
裁判員5「入所者家族から感謝の言葉などはありましたか」
植松被告「ありましたけど…『若いのにえらい』とか言われても、何がえらいのかと思いました」
裁判員6「あなたは100回以上人を刺しているが、何を感じましたか」
植松被告「必死でしたので、何かを考えているような感じではなかったです」
裁判員6「施設に勤めていなければ、事件はやらなかったかもしれないということはないですか」
植松被告「そうかもしれません」
《裁判員からの質問が終わり、裁判長が補足で質問する》
裁判長「友人に供述調書のなかで『もう世の中には出てこないでほしい』といわれたことについて、どう思いましたか」
植松被告「裏切ってしまったので仕方ないと思いますが、その方は(後日)面会にきてくれたので…そのときはそう思ったのかもしれません」
裁判長「社会に出たらまた同じことをやりますか」
植松被告「二度とこのような事件は起こしません」
裁判長「なぜ」
植松被告「(事件を起こしたことで)十分、自分の考えをお伝えさせてもらったからです」
裁判長「捕まることへの恐怖心は」
植松被告「ありました。捕まれば楽しいことができなくなってしまう恐怖心がありました」
裁判長「犯行前にタクシーを降りるときにお釣りをもらわなかった。急いだ理由は何ですか」
植松被告「これから殺害するということで、落ち着かなくなっていたのだと思います」
《植松被告が主張する自身の「責任能力」について、裁判長が改めて確認する》
青沼裁判長「あなたは自分で責任能力があるといっているが、法律上どういう意味か分かりますか」
植松被告「はい」
青沼裁判長「善悪の責任能力があるということですか」
植松被告「はい」
青沼裁判長「それはなぜですか」
植松被告「自分は善悪の判断ができるからです」
青沼裁判長「自分のしたことは正しいことだと思っていますか」
植松被告「事件を起こしたことが正しいかは分かりませんが、考えは正しいと思います」
青沼裁判長「今日、謝罪をしましたけれど、それは悪いと思ったからですか」
植松被告「そういうことです」
《変わらず自説の述べ続ける植松被告。質問は最後に、2人の裁判官に移っていく》
Source : 国内 – Yahoo!ニュース