福岡県政界の胃袋を支えた県庁前の名店が姿を消した。7月26日に閉店した福岡市博多区千代の「中華 香林(しゃんりん)」。三重野量さん(65)夫妻が切り盛りしてきたが、年齢を考え、店の傍らで行ってきた調理の講師業に専念することにした。「何度も通ってくださるお客さんの多さに驚いたし、感謝したい」。店舗の移転、拡大の誘いもあったが、変わらず地域に根付き、来店客をとりこにした20年だった。
「はい、麺定(食)でーす」。妻真須美さん(58)が注文を告げると、奥の調理場で三重野さんが手際よく中華鍋を振った。
「閉店します」常連客に衝撃
しゃきしゃきした野菜たっぷりの上海焼きそば。程よい辛さとうま味が絶妙のスープの担々麺。酢豚はジューシーで、甘酸っぱさが食欲をそそる…。10人余りのいすが並ぶ、こぢんまりとした店内は、昼食時はだいたい県庁職員や会社員などで満員だった。
そんな家庭的な雰囲気の店内に、常連客に衝撃を与える告知が張り出されたのは5月の連休明けだった。
7月26日に閉店します‐。いち早く気付いたのは小川洋知事だった。「え? もう酢豚、食べられなくなるの?」。月1~2回は利用したという知事の残念がる姿に、三重野さんは苦笑いするしかなかった。
県議や国会議員秘書も利用
福岡市内のホテルや中華料理店で修業し、中国の料理人とも一緒に働いたことがある三重野さん。独立し、店をオープンしたのは2000年。組織に属して働くのに窮屈さを感じ、自宅からも近い場所を選んだ。
小川知事ら県幹部や、元県議の月形祐二・糸島市長や森田俊介・元朝倉市長、現職県議に国会議員秘書…。名前を挙げればきりがない。周囲は自民、国民民主など政党の県連事務所も多く、その職員も利用した。県議を辞めた後も、県庁に寄るときに合わせて店に顔を出してくれた人も少なくなかった。ただどの政治家たちも、政治の話はほとんどしなかったという。三重野さんの料理を夢中で味わっていたのだろう。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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