新型コロナウイルスの感染再拡大で、さらなる状況悪化が懸念される冬本番に向け、学校現場は今、寒さに配慮しつつ教室の換気を適切に行うという難題を突き付けられている。特に寒さが厳しい地方で窓を開けるとなれば、授業に支障をきたしかねない。室温管理と換気の両立が必須となる中、北海道では空き教室で取り入れた外気を暖めて校内に行き渡らせることにより、空き教室そのものを“暖房装置”として活用する妙案も登場している。(福田涼太郎) 「換気の時間を計りながら授業をするのは教員の負担だ。窓を開ければ寒さに耐えたとしても子供の集中力は途切れる。それに窓が凍り付いたら開かない」 真冬には氷点下20度に達するオホーツク海に面した北海道紋別(もんべつ)市。市教委の担当者は厳冬期に教室の窓を開けて換気することの難しさを説明する。 換気では新しい空気を取り入れるだけでなく、教室内の古い空気を外に出す必要がある。窓を開けての換気が困難と判断した同市は冬に備え、小中学校の各教室に換気扇を設置することを決定。年内の完了を目指して工事を進めている。 設置後は廊下の窓を開けて外気を取り入れ、扇風機を使って教室の廊下側の壁上部にある小窓(欄間)を通じて教室内に流し込み、古い空気は換気扇から排出する。教室内の屋外側の窓を開けることは避けられるが、廊下側から少量ながら冷たい空気が常に入ってくるため、「多少、寒くはなる」(担当者)と話す。 文部科学省が示した新型コロナ対策のマニュアルでは、換気について「気候上可能な限り常時、困難な場合はこまめに(30分に1回以上、数分間程度、窓を全開する)、2方向の窓を同時に開けて行う」ことを求めている。 今夏は猛暑の中で窓を開けて換気をすることに熱中症などの懸念が向けられた。文科省の担当者は「夏よりも冬の方が外気と室内の温度差が大きい」と冬場の難しさを指摘。ある程度、暖房の温度や服装を調節することで対応できるものの、子供によっては体調を崩す恐れもある。 また、設置が進んでいる暖房とは異なり、換気設備は設置を義務付けた平成15年7月の改正建築基準法施行前に建てられた学校では整備が進んでいない可能性がある。換気扇がなければ「窓をこまめに開ける」ことを余儀なくされる。 北海道教育委員会は今月19日、道内の各教委などに「北海道の冬季の寒さに配慮した学校の換気方法」と題する資料を提供。その中で換気扇の有無別に方法を紹介している。 換気扇がある場合は、空き教室や授業を行っていない特別教室の窓を開けて外気を取り入れ、暖房をつけて空気を暖める。廊下を通じて暖めた空気が校内をめぐり、欄間から使用中の教室内に流れ込み、古い空気は換気扇から屋外に排気され続けるという仕組みだ。複数の空き教室を使えば、それだけ寒さが和らぐ。 換気扇がない場合も同様の流れだが、校舎の延べ面積や在校者の年齢層、人数など条件別に必要な換気量を割り出し、教室の窓や扉の開け幅の目安を細かく提示。窓を開ける際には外からの気流が人に直接当たらないよう衝立を活用することも提案している。 資料を作成した道立総合研究機構建築研究本部の担当者は「換気扇があるパターンの方法であれば、そのまま他の地域でも取り入れられる」と説明。文科省は近く新型コロナの対策マニュアルを改訂する予定で、こうした真冬の換気方法の参考情報も提供する。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース