地球温暖化予測の研究分野を切り開いた気象学者の真鍋淑郎(しゅくろう)さん(90)が、ノーベル物理学賞を受賞することが決まった。決定から一夜明けた6日、生まれ育った愛媛県四国中央市では偉業をたたえる声が上がった。愛媛出身者のノーベル賞受賞は、文学賞の大江健三郎さん(内子町)、物理学賞の中村修二さん(伊方町)に次いで3人目。(長田豊、照井琢見、伊東邦昭)
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真鍋さんは1931年、新立(しんりつ)村(のちに新宮村、現在の四国中央市新宮町)で生まれた。旧制三島中学(現・県立三島高校)を卒業して東京大に進むまで、四国中央市で過ごした。
母校の三島高校(四国中央市三島中央5丁目)では6日、後輩たちが先輩の偉業を喜んだ。鈴木斎(ひとし)校長は全校放送で生徒たちに「皆さんと同じ場所で学び、青春の日々を過ごされた真鍋先生の快挙を誇りに思い、これまで以上に大きな夢や希望を持って、これからの生活を歩んでくれることを期待しています」と呼びかけた。
理系を選択する生徒が集まる2年3組の教室では、受賞決定を報じる記事が配られた。生徒たちからは「今では当たり前のことを最初に予測するって、すごい」といった声が上がった。
三宅陽仁(はると)さん(16)は「素直にすごいという言葉しか出ない」。ニュースを見るまでは真鍋さんが卒業生とは知らなかったが、記事を読んで業績を知った。得意教科の地理でも気候について学ぶ。「地元の偉大な先輩に刺激されました。勉強を頑張って先輩のようになってみたい」
秦夕夏さん(17)は「身近な気候についての研究で物理学賞を受賞すると聞いて誇らしく感じた」。気候変動予測という、未知の分野を突き詰めた先輩の偉業に、自分の勉強の姿勢を変えようと思ったという。「物理や化学も身近なことに引きつけて勉強しようと思います」
昼休みに集まった生徒会の役員たちは、「親近感がわいた」と口をそろえた。
生徒会長の大西真奈美さん(17)は、父親が真鍋さんと同じ新宮出身。「新宮は自然に囲まれた本当にいい場所。ノーベル賞をきっかけに有名になってほしい」と笑顔をみせた。
今までノーベル賞のニュースは「すごすぎて遠い存在」だったが、今回は夜も朝もニュースをチェックした。「温暖化の問題に生徒みんなが目を向けられるよう、小さなことからでも取り組んでいきたい」
真鍋さんが卒業した新宮尋常高等小学校が前身の市立新宮小・中学校(四国中央市新宮町新宮)でも、6日朝、各学級で担任の教員が真鍋さんの受賞決定を話題にしたという。
篠原隆輔校長は「理科や総合的な学習の時間などで習う、地球温暖化問題の礎になる研究をされたということで、子どもたちも大変誇らしい気持ちだと思う。子どもたちにも真鍋さんを目標に、大きな夢を持って成長してほしい」とコメントした。
40年前の講演、村の広報誌に
「外国人に比べて、日本人に欠けているのは表現力です。自分の表現力を養うことが、これからは大事です。しっかり勉強してください」「苦闘こそ人生を切り開く道だ」
旧・新宮村が発行した1982年6月の広報誌に、真鍋淑郎さんが村に帰郷した際の講演の様子がまとめられている。真鍋さんは東京での国際会議や京都大学での講演後、4年ぶりに帰郷。82年5月28日、村の公民館で小学6年生と中学生を対象に「私の生い立ち そして世界と日本」と題した記念講演を行った。
講演後の質疑で、渡米の理由について「戦後、私の研究成果を生かす就職先が日本にはなかった。米国では思う存分の研究ができて、もう1年、もう1年という間に現在に至りました」。当時の村について「戦後間もないころと比べると、日本経済の発展に伴い村の発展にも目を見張らされます。村をこれまで発展させた村民の心意気が感じられますし、歴代村長の功績がうかがえます。また、昔と変わらぬ良い環境で、すばらしく思います」と答えたという。
■祝いの垂れ幕、大急ぎで準備…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル